30年間で急増、独身男女で共通する「結婚の利点」 とは?

結婚支援の現場の方たちからの声や、マッチングデータの分析をしていて一番感じることは、「道路交通法を知らずに道路を走る」といえるような無謀な戦いに出てしまう男女が少なくないということです。

結婚を望む男女は「子どもがほしいので」「さみしいので」「親に言われて」など、自分サイドの事情の探究者は多いのですが、では相手の事情は?となると「とりあえず自分の希望はわかるので、それに合わせてくれる人で」と思考停止しがちです。
この「相手の事情には思考停止」する状態こそ、成婚への大きな壁になります。

最近ではダイバーシティという言葉が都合よく1人歩きして「相手の事情はしらない、私は私らしく」となりがちではあるものの、そうはいっても、男女双方の気持ちが融合してはじめての成婚となることから、今回は「相手の事情」を推し量るために必要なデータをご紹介してみたいと思います。


30年間で急増した「結婚の利点」は?

今回使用するデータは、国立社会保障・人口問題研究がほぼ5年に1度実施する大規模調査「出生動向基本調査」の2015年(直近)のうち、独身者調査のデータです。
この調査の中で、独身者に「結婚の利点」が継続的に聞かれています。
まずは報告書で公表されている、次のデータをご覧ください。

意外かもしれませんが、1987年から2015年までの7回の調査で、結婚の利点として18歳から34歳までの独身者から挙げられる理由の中で、「自分の子どもや家庭をもてる」の割合が際立って急増してきています。

「自分の子どもや家庭をもてる」は、もともと女性においては約30年間にわたりトップを競う、主たる利点としてあげられている選択肢だったのですが、3割前半から半数へと大きく増加している様子がみてとれます。また、より興味深いのは、男性においても1980年代には2割を切る、他の選択肢と比べてもそれほど利点とされていなかったものであったのに、4割近くまで指数関数的に増加している利点となっています。

ここで「いやいや、この調査は選択肢から2つ選ぶから、他にめぼしい選択肢がないから仕方なく選んだんでしょ?」という意見が出てきそうですが、この質問では「その他」や「非該当(ない)」も選べるため、他にないから仕方なくではなく「独身男性があえて利点として選んでいる項目である」ということになります。

つまり、結婚の利点を子どもや家庭が持てることととらえている男女が約30年の間に急増しており、直近の2015年では、女性の2人に1人、男性の3人に1人以上が結婚の利点としてとらえている、ということが言えます。

30年前に18歳から34歳であった親世代(48歳から64歳)の男女は、今の若い男女が自分たちよりもずっと結婚に対して「家族形成嗜好」であることを理解しておく必要があります。一方で、「社会的信用や対等な関係が得られる」を利点に選択した割合は、男女とも急落している状況もみてとれます。若い男女は「自分たちのころほど、出世や体裁や社会的安定で結婚したいわけではなく、純粋に家族をもちたいから結婚する傾向がはるかに強いのだ」ということを理解して、職場の上司、会社の経営者は雇用環境を考えないといけなくなってきています。結婚したから、家をもったからやめないだろうと転勤、やハードワークを課したとたん離職といった事態の増加にもつながりかねない、ということが指摘できます。

男女とも「経済的に余裕が持てる」も増加傾向ですが、これは選択肢の選ばれ方や、非農林業において共働き世帯が68%(2019年、国立労働政策研究・研修機構調査)となっている状況から見て、「自分の家族や子どもを持つためには」1人で稼ぐより2人の方が安心、という意識が、選択の背景に働いているのではないかと思われます。

若い男女が結婚に求める傾向

上のグラフは34歳未満の独身の回答を男女で分けていますが、2015年の回答についてさらに、年齢を35歳以上(上のグラフに含まれないグループ)、35歳未満で2分して、男女×年齢区分で4グループにわけて集計しなおし、利点のとらえ方の違いがあるかを見てみたいと思います。

結婚の利点のとらえ方として4グループで大きな差が出ているのが、やはり「自分の子どもや家庭をもてる」です。
35歳未満の女性では2人に1人と他のグループに比べて際立って多くなっており、次に35歳未満の男性で多く、男女ともに35歳以上と未満という年齢差で格差がでる様子がうかがえます。特に35歳以上では、男性よりも女性の選択が低くなっています。

これらの結果から指摘できることがあるとすれば、35歳未満の男女では「自分の子どもや家庭をもてる」ことが第1位かつ他の選択肢に比べても結婚の利点として高い割合で選ばれていますので、「できれば子どもも欲しいかも」「体力も気力ももうアレだけれど、子作りもできたらいいかな」といった中途半端な姿勢で若い相手への興味を示すことは、(特に女性に対しては)嫌われかねない、門前払いになりかねない、ということです。

実際、30代後半の男性が婚活イベントで出会った20代前半の女性に、自分に気持ちを十分惹きつけてから伝えた方が有利と考えたのかもしれませんが、何度もデートしていい雰囲気になったのちに「子どもはいらないんだけれど」と話して大激怒をかった、という事例もあります。

子どもが欲しい欲しくないに関しては自分の都合はさておき、最初にきちんと話しておくことが特に34歳未満の相手には大切であるといえるでしょう。

次に、年齢にかかわらず男女間ではっきりと差が出たのが「経済的に余裕が持てる」でした。
こう書くと「ほらやっぱり女は金だ!」と叫ぶ声が聞こえてきそうですが、よく図を見てほしいと思います。女性の選択割合は2割です。つまり、利点2択としてあがるほど強く経済的余裕が結婚のメリットと思う女性は、5人に1人程度ということです。34歳未満の女性ではそれよりも上位に、自分の子ども家庭を持つ、精神的安らぎを得る、親を安心させるが来ています。35歳以上の女性でも順位はかわりますが、同じ3つがより上位に来ています。

世界経済フォーラムでアフリカ諸国並みの男女経済格差が指摘されている日本であるにもかかわらずこの程度の割合であることの方が、むしろ筆者の目には新鮮に映ったのですが、いかがでしょうか。成婚を目指す男性は、女性に対して「金だ、金が基準に違いない」と思いすぎる(それが言動に出る)ことは、かえって失礼にうけとめられ嫌悪されることも少なくない、ということは注意した方がよいでしょう。

「年収があと100万増えたら婚活します」という大企業のアラサー男性がいましたが、年収が上がる一方で年齢も上がることが、彼にとっていい出会いを招くとは必ずしも限らないことを指摘しておきたいと思います。2018年婚姻統計では、7割の初婚男性の婚姻届けが32歳までに、8割の初婚男性の婚姻届が35歳までに出されています。男性であっても年齢的に出遅れることのダメージは、想像を超えて大きいのです。

ばらつきがみられるものの最後に、「親を安心させたり周囲の期待にこたえられる」があります。

これは男性では年齢にかかわらず2割強で変わらないのですが、女性では年齢ではっきり分かれている様子がみてとれます。34歳未満と35歳以上では10ポイントも異なってくるため、アドバイスとしては「女性は後になって親や周囲の期待に応えたくなる、そうせざるを得なくなる気持ちになる可能性が男性より高いので、まだ若いと思ううちに、親とよくよく話し合っておいたほうがよい」だと思います。

まずは相手の希望を知る

お見合いやデートの後、なぜか相手が怒ってしまった。
せっかく成婚に向けて活動したのに、いい思い出がない。
様々な「婚活疲れ」の話がSNSでも相談所でもつぶやかれています。しかし、その疲れが「相手に自分の希望をひたすら押し付けようした結果、自爆した」ということからくるものであると、いつまでたっても、何度チャレンジしても、疲れ続けることになります。

結婚は希望する状態を誰かに与えてもらうものではなく、誰かと新たな希望を目指して2人で結果を作り上げていくもの、です。
結婚の醍醐味は、天から希望の関係が降ってくる美味しさ、ということでは決してなく、不完全な2人同士、新たな希望を探し、築き上げていけるかどうか。

つまり、「私もあの人も、どこまで進化の変化を遂げられるか」にあると思います。

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