2020長崎スポーツこの1年<1>失われた集大成の場 高校の各種大会が中止に

県高校ソフトボール交流大会で「修了証」を贈られた各校の3年生。全力を尽くして笑顔で大会を終えた=大村市総合運動公園

 新型コロナウイルスの脅威が世界を襲った2020年。県高総体が中止になるなど、長崎のスポーツ界も甚大な影響を受けた。東京五輪は来夏に延期され、代表内定者や有力候補にも動きがあった。そんな異例の事態の中、明るいニュースも届いた。秋の九州地区高校野球大会で小規模校の大崎が初優勝。来春の選抜大会出場を確実にした。県内初の男子プロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」も誕生。サッカーJ2のV・ファーレン長崎は終盤まで激しいJ1昇格争いを繰り広げた。長崎スポーツの1年を振り返る。

 五輪イヤーが幕開けしたころ、誰が今の世界を予測できただろうか。世界中で未知のウイルスが猛威を振るい、1月末ごろから各種国際大会が延期や中止になり始めた。国内のスポーツ界も早急な対応を迫られるようになっていった。
 春の全国高校選抜大会は軒並み中止になった。厳しい予選を勝ち抜いて代表権をつかみ、春の大舞台を目指してきた選手たち。日本一が狙えるチームもあった。でも、このころはまだ「夏のインターハイでもう一度」と信じて前へ進めた。
 だが、その願いもかなわなかった。4月、全国高校体育連盟は史上初となるインターハイ中止を決定。30競技の高校日本一を決めるビッグイベントがなくなった。なぎなたを開催予定だった松浦市からは「準備を進めてきたが、やむを得ない」「“なぎなたのまち”をPRする好機だったのに…」など無念の声が上がった。
 5月には県高総体も史上初めて中止になった。ほとんどの3年生にとって部活動の集大成となるはずだった大切な舞台。「厳しいかもしれないが、何とかやってほしい」という現場の思いは届かなかった。仲間たちと努力してきた成果を発表する場を失った3年生の多くが「何も考えられない」「悔しさしかない」と涙に暮れた。
 この状況を受けて、各競技が代替イベントを模索。県全体の大会もあれば、地域の交流戦、学校対抗戦など、それぞれが知恵を絞って3年生の区切りの場を設けた。参加した選手たちは悔しさを胸にしまって笑顔でプレー。3年生一人一人に「修了証」を贈るなど、各競技団体が趣向を凝らして盛り上げた。
 全力で最後の“大会”を駆け抜けた後、選手たちからは感謝の声が相次いだ。「みんなでやれてよかった」「県高総体だと思ってやり切った」「この場をつくってくれた先生たちにありがとうと言いたい」-。そこにはスポーツをやれる喜びが詰まっていた。
 20日の駅伝を皮切りに、冬の全国高校スポーツ大会が始まった。年末年始にかけて、バスケットボール、ラグビー、サッカー、バレーボールなどが予定されている。開催に否定的な意見もあるが、どうか大会が無事に最後まで行われ、地元に元気、勇気が届くことを願っている。


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