【取材の周辺】令和最大の大型倒産 ダイヤメットの民事再生、主因は「弁済期日12月末の551億円の借入金」

 12月21日に子会社を含め負債603億円を抱えて民事再生法の適用を申請し、令和最大の大型倒産となった(株)ダイヤメット(TSR企業コード:203053605)。その原因は、「債務超過」と「弁済期に到来した債務を弁済できない状態」だった。
東京商工リサーチ(TSR)が独自入手したダイヤメットの「再生手続開始申立書」や関係筋への取材で判明した。

品質データの改ざん

 ダイヤメットは2005年に三菱マテリアル(株)(TSR企業コード:291022669、千代田区、以下MMC)から分離して三菱マテリアルPMG(株)として設立、09年に現商号に変更した。設立以来、自動車部品製造を手がけてきたが、16年と18年に製品の品質保証(不適合品の出荷等の不正)問題が発覚し、2018年3月に再発防止策を公表した。以後は、品質保証体制の強化を迫られ、当時の親会社だったMMCから資金貸付などの支援を受けていた。再建を目指したが、人件費の増加や設備の老朽化対応などで赤字が続き、20年3月期末の債務超過額は177億771万円に膨らんでいた。

親会社が三菱マテリアルからファンドへ

 20年9月、MMCはエンデバー・ユナイテッド(株)(TSR企業コード:300145713、以下EU)との間で、ダイヤメットの株式譲渡に関する基本合意の締結を発表した。最終合意を経て、12月4日にEUのグループ内投資ファンドであるEUF2号に当社の全株式を譲渡した。これと同時に、MMCのダイヤメットに対する貸付金551億5100万円も同ファンドに譲渡された。
 ところが、譲渡された551億5100万円の弁済期日は、329億5000万円が2020年12月28日、残りの222億100万円も同月31日で、期限が迫っていた。しかし、債務超過のダイヤメットは弁済する資力はなく、「弁済期に到来した債務を弁済できない状態」として、民事再生法の適用を申請した。株式譲渡からわずか17日後の異例の倒産となったが、MMCは債権をいくらで譲渡したのか。関係者は口を閉ざす。

「法的手続きも選択肢の一つだった」

 ダイヤメットが民事再生法の適用を申請した12月21日、MMCの担当者がTSRの取材に応じた。担当者は、「株式譲渡に関する交渉の中で、法的手続きも選択肢の一つだったが、それありきではなかった。法的申請はあくまでEUの判断だ」と語る。
 「申立書」によると、主要な仕入先・販売先には個別に状況を説明し、民事再生への理解をすでに得ていたという。12月21日付でダイヤメットとEUは、スポンサー支援に関して基本合意し、スポンサー引き受けによる増資を予定している。ダイヤメットによると、一般債権は全額弁済する方針で、既存取引の継続を重視して再建を図る。

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‌ダイヤメットの本社

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年12月24日号掲載「取材の周辺」を再編集)

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