よいお年を

 東京都知事選の投開票日だった6月5日には〈4日続けて感染者3桁〉と走り書きがあった。きっとその頃はその感染者数が衝撃だったのだ。いつの間にか少々の数字には驚かなくなった。いや、驚いていられなくなった▲きょうでお役御免の2020年版の手帳。その日の予定や出来事に交じって、どうでもいい思いつきを隅の方にちょこちょこ落書きしている。ぱらぱらめくり返してみた▲〈1回も王手が掛かってない〉は将棋の棋聖戦第2局。相手に何もさせずに勝った藤井聡太七段はこの18日後、史上最年少でタイトルに輝いた。〈大人げないのか、気持ちが若いのか〉は70代の2人が激しく罵り(ののし)合った秋の米大統領選討論会。分断の傷は深い▲〈「旧J」とか「旧S」とか流行ってるかも〉…いくら何でもテレビの見過ぎだ。県内の有力地銀2行が合併した十八親和銀行は年明けにシステムの統合を終え、本格始動のギアがさらに1段上がる▲〈一番大事なのは、自分にしか書けないことを、誰にでもわかる文章で書くこと〉とあるのは〈井上ひさし没後10年〉の4月9日▲大作家の言葉に素直に感動したのはいいが、そんな原稿が何回かでも書けたかどうか。何しろ書き写したこと自体を実は失念していた。反省を胸に新しい年へ。皆さまもよいお年を。(智)

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