新玉の年

 「あらたまの」とは「年」「月」「春」などにかかる枕ことばで、「あらたまの年」とは新しく迎えた年をいう。新玉、粗玉と書き、まだ磨かれていない玉を意味するらしい▲例年ならば、今頃の紙面は“あらたまの人”の晴れ着、笑顔、きりっと引き締まった顔の写真で飾られる。正月休みで帰省した若い人たちが一足早い成人式に臨むが、今年は慣例通りにはいかなかった▲新型コロナの影響で、県内のほとんどの自治体が成人式の中止や延期を決めている。ただ一つ、東彼杵町はきのう式典を開き、新上五島町の今里地区では6人の門出を祝った▲東彼杵町の式典で、看護師を目指す人が「病院実習も難しい状況だが、日々まい進する」と宣言した。これから磨かれていく人の言葉は力強く、すがすがしい▲自分が20歳の頃にはこんなこと言えなかったな…と、新成人の決意表明にはいつも感じ入るばかりだが、今年は式の中止、延期で決意を胸に秘めたままの新成人も多いだろう。文字にして残したり、声にして誰かに伝えたりと、思いをどうぞ形にしてほしい▲感染拡大がやまない中で、きょうから仕事始めという人も多い。1年がかりで自分を磨くと思えば、今は誰もが“あらたまの人”かもしれない。この局面を乗り越えて、笑顔で振り返る年でありますように。(徹)

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