51歳独身「キャッシュレス決済の多用で気づいたら貯金残高が200万に」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、51歳独身の会社員の方。キャッシュレス決済を多用しているうちにいくら使っているかわからなくなり、気づけば貯金が目減りしているという相談者。定年まであと10年で老後資金を貯められるか心配されていますが……。FPの横山光昭氏がお答えします。

新型コロナウイルスの影響で働き方が変わり、収入が大幅に下がりました。また、いま住んでいるマンションも他の部屋の売値を見ていると価格が下がってきているので、もしかすると将来的な価値が無くなってしまうのかもしれません。老後どうなってしまうのかと心配です。

というのも、マンションを購入して住まいを確保していれば、老後資金は生活費だけで十分でしょうし、退職金と年金があれば十分だと思って貯金はあまり意識してこなかったのです。万が一、資金不足になるなら、マンションを売って生活費にしようと、値が下がりにくいマンションを探して購入したはずでした。

そして現状は、毎月赤字の状態です。ずっと独身で一人暮らしのため、極端に生活費はかからないと思ってきました。ですが赤字ということは使っているということでしょう。キャッシュレス決済が便利なので交通系電子マネーをよく使うようになってしまったので、毎月いくら使っているのかはわかりません。ボーナスもありますし、お金が残る状態ではあると思っていたのですが、最近は預金残高が減ってきています。今のままでは、老後貧乏、老後破綻となってしまうのかもしれません。

定年まであと10年ほど。頑張れば一人分の老後資金くらい作れるのではないかと思います。老後破綻とならない資産作りをどのようにしていけばよいのか、教えてください。

【相談者プロフィール】

・51歳、会社員、独身

・毎月の手取り収入:6万6,000円

・年間の手取りボーナス:約90万円

・貯金:約200万円(目減りした後の金額)

・毎月の支出の目安:42万1,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(ローン):11万2,000円

・食費(外食が主):7万7,000 円

・水道光熱費:1万6,000円

・通信費:2万1,000円

・生命保険料:2万2,000円

・日用品代:6,000円

・医療費:1万8,000円

・教育費:1万1,000 円

・交通費:4,000 円

・被服費:8,000円

・交際費:4万2,000円

・娯楽費:2万6,000円

・し好品(タバコ):2万3,000円

・その他:3万5,000円


横山:現状では明らかに支出が多すぎます。老後資金作りを意識するのなら、今のままでは上手くいきません。改善方法を考えてみましょう。

老後資金を甘く見てはいけない

ご相談者に限らず、「退職金や年金があるから、老後は何とかなるはずだ」と考えている人は意外と多くいらっしゃいます。そういった方は、定年間際になってから、もしくは実際、年金生活に入ってから、生活費が不足していることに気づき、慌ててしまいます。

2019年、老後資金2,000万円問題が注目されました。必ずしも皆さんに2,000万円が必要だというわけではありませんが、退職金や年金で不足する分は、やはりご自分で備えておかなくてはなりません。

ご相談者が年金をもらう頃にはいくらくらいになっているかわかりませんが、男性一人の厚生年金受給額の平均は16万6,000円というデータがあります(厚生労働省「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)。厚生年金は収入により年金額が異なるので、ご相談者の場合はもう少し多かったり少なかったりするかもしれませんが、1カ月に20万円も手にすることができないのです。

今からできる二つのこと

年金生活に入るころには住宅ローンは完済しているでしょうが、今の暮らし方を続けると、毎月14万円ほどを老後資金から切り崩さないと暮らせません。1年間に切り崩す必要がある金額は168万円。10年生きれば1,680万円、20年生きれば3,360万円です。かなり大きな金額です。これを退職金だけで賄えるのかを、今のうちにしっかりと考えて、老後資金作りを考えていかねばなりません。

そのためにできることは、今から生活費を少なくし、少しでも貯金をしていくこと。そして、貯金ができるようになったら、運用を始めてみることの二つです。特に運用は無理をすることはありませんが、可能であれば始めていただきたいもの。

ではまず、生活費を少なくし、貯金を増やす方法を試してみましょう。

支出記録を費目に振り分けてみよう

現状、一人暮らしとは思えないほど生活費がかかっています。改善につなげるために、継続して、1カ月の支出を費目ごとにまとめてみてください。そうすることで、自分の支出の傾向を知ることができます。

幸い、キャッシュレス決済は支出の記録が残ります。それを振り分けてみるとよいでしょう。手書きが分かりやすくてよいかと思いますが、面倒だと思う場合は「家計簿アプリ」を活用すると良いでしょう。

家計簿アプリはキャッシュレス決済の支出を自動で記録してくれますし、費目の設定をしておくと、費目に分けてくれます。時々間違った振り分けになることもありますが、大まかな支出の傾向を知るには十分です。それを見ながら削減できるところはないかを考えてみましょう。

節約の心構え

絶対に節約、無駄はダメでとにかく我慢をしようという生活を送ってほしいわけではありません。必要な支出はしっかりと払い、そうではない支出は控え、支出にメリハリをつけることが基本です。食費は外食をしなくても、弁当と好きなビールを買って家で食べよう、付き合いは頻度を少し減らそう、そのような感じでよいのです。みんな生きて生活しているのですから、その為に支出してはいけないということではありません。基準なく、なんでもかんでも払うということがよくないのです。選別の仕方を覚えましょう。

毎月の貯金の一部を投資へ

このように支出にメリハリをつけていくと、次第に毎月お金が余るようになるでしょう。そうしたら、その金額はしっかり貯金します。余る金額が安定したら、その金額を先取りで貯金するのもよいと思います。

そして、投資をしてみようかなと思われたのなら、積立投資を始めてみましょう。初心者にもお勧めです。60歳までお金を引き出せなくてもよいなら私的年金制度の「iDeCo」を活用してもよいでしょうし、お金は自由に引き出したいと思うのなら「つみたてNISA」を利用するでもよいでしょう。せっかくですから、非課税制度のある運用方法を試してみるとよいと思うのです。

これらは「長期・分散・投資」の恩恵を受けていく投資です。ネット証券などで取り組むとさらにもう一つの大切な要素である「コスト」の恩恵も得られます。50代、60代からでは遅いのでは?と思われる方もいらっしゃいますが、今は人生100年時代。60歳で定年してもあと40年生きる可能性も高くなってきているのです。まだまだ長期的な運用を考えても大丈夫です。

2年後にはiDeCoは加入年齢が65歳まで、引き出し上限年齢も75歳まで引きあがりますので、まだ十分に運用できます。掛け金が全額所得控除になるメリットも受けられます。つみたてNISAは特に年齢を気にすることなく利用できます。

老後資金作りを考えるのなら、一度調べてみて、検討をしてみてはいかがでしょうか。

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