長崎医療圏「限界に近い」 病床占有率7割超、患者急増で現場疲弊

新型コロナウイルスの感染者増に伴い、医療体制の逼迫度が増している長崎みなとメディカルセンター=長崎市新地町

 新型コロナウイルスの感染者が急増する中、長崎医療圏(長崎、西海両市、西彼時津、長与両町)は確保病床の占有率が7割を超え、逼迫(ひっぱく)度が増している。長崎市の感染症指定医療機関、長崎みなとメディカルセンターの門田淳一院長が5日、長崎新聞のオンライン取材に応じ、長崎医療圏の医療体制について「限界に近い」との強い危機感を示した。
 長崎市によると、昨年12月25日から今月5日までに公表した市内の感染者は170人。感染者増に伴い、長崎医療圏の病床も増やしているが、4日時点で111の病床に対し83人が入院。占有率は約74%で、年末には80%近くにまで迫った。
 センターの受け入れ患者は軽症から中等症。最近は介護が必要な高齢者らが多く、医療現場への負荷が大きくなっているという。センターの確保病床の占有率も70%程度で、コロナ患者の対応に当たる看護師を確保するため、12月下旬までに2病棟を閉鎖した。さらに年末年始の急増を受け、複数の病棟を縮小し、1病棟分の余剰人員を捻出。全体の1割強の約60人をコロナ対応に回している。
 門田院長は、確保病床が「まだ3割ある」とみるのは危険だと指摘。コロナの診療をできる医師の数が限られる上、看護師の配置を考えると「受け入れはほぼ限界に近い」。
 入院延期など一般診療への影響も出ている。このまま増えれば「救急患者の対応にも影響が出る。1週間後の話ではなく、明日あさって、その状況になってもおかしくない」と危惧する。
 医療スタッフの疲労感も増す一方だ。年末年始はコロナ対応で例年よりも増員した。隔離病棟の中、職員は感染の恐怖と常に隣り合わせ。病棟を離れても、感染防止のため外食禁止など強い行動制限が設けられている。「ストレスはたまるけど発散の場がない。長期休暇を取らせてあげたいがそれも難しくて」。センターの楠本美和看護部長は現場の苦悩を明かす。
 使命感を持ってコロナと向き合ってきた看護師からも「使命感ややりがいだけではもう…」と疲弊の声が漏れているという。年末には持ち回り制の輪番病院の一つでクラスター(感染者集団)が発生。休日夜間の救急医療は、その病院分も対応している。
 県内で医療機関や高齢者施設でのクラスターが相次ぐ。門田院長は「発症前から感染力があるのがコロナの特徴。知らない間に持ち込まれてしまう。どんなに対策をとってもリスクはゼロにはできない」とし、「だから」と続ける。
 「全体の感染者を減らしていくしかない。当たり前の医療を維持するため、人との接触を減らすなど自分自身が感染しない行動をしてほしい」。そう強く訴える。

 


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