「このままでは子どもが持てない」夫の前妻への支払いで貯蓄できない妻の叫び

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、38歳の会社員の女性。夫の前妻への支払いが家計の負担になっているという相談者。そんななか、自分の家庭の養育費や老後資金をどうやって貯めていけばよいのでしょうか。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

夫が前妻の生活費とその子ども(14歳)の養育費として、毎月12万円の仕送りをしています。仕方がないこととわかっているのですが、夫が我が家に入れる生活費は18万円強。その18万円から8万円を自分の小遣いとして持っていくので、家計に入ってくるのは実質10万円ちょっとです。

私も収入があるので、二人の収入を合わせると暮らしていくことはできるのですが、家賃負担や生活費の負担は私の方が多いので、今のままだと私たちの子どもができたらやっていけないのではないかと不安になります。

貯金は私の独身時代にためた300万円ほどだけです。夫は小遣いから貯金をしているようですが、それは私たち夫婦のためではなく、前妻との子の大学資金を作るためのようです。

ボーナス時こそは貯めたいと思っているのですが、帰省したり旅行に行ったりでお金を使いがちですし、夫は子にプレゼントをしたり小遣いを与え、結局ほとんど残りません。

夫の金銭的に負担については、今のところは仕方がないと受け止めています。ですが、私も子どもを産み、育て、教育費や老後資金を貯めて……といった、普通の家庭の暮らしがしたい。そのためには、私たち夫婦の貯金も増やしていかないといけないと思っているのです。

なかなか厳しい現状ではありますが、お金を貯めていくことはできるでしょうか。

【相談者プロフィール】

・女性、38歳、会社員。夫、48歳、会社員

・手取り収入:

相談者23万6,000円、年間ボーナス約80万円

夫30万4,000円、年間ボーナス約100万円

・貯金:約300万円(私の婚前貯金のみ)

・毎月の支出の目安:53万7,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(家賃):12万9,000 円

・食費:7万3,000 円

・水道光熱費:1万6,000 円

・通信費:7,000 円

・生命保険料:3,000 円

・日用品代:5,000 円

・医療費:2万6,000 円

・教育費:5,000 円

・交通費:4,000 円

・被服費: 1万 円

・交際費: 5,000 円

・娯楽費:1万円

・こづかい: 10万 円

・その他: 2万4,000 円

・仕送り:12万円


FP:夫が生活費をあまり負担できなく、お金が貯まらないことで、ご夫婦のこれからの暮らしが不安なのですね。仕方がない状況とも言えますが、現状を少しでも改善できる方法を考えてみましょう。

仕送り以外の支出を見直し、貯蓄を目指す

夫の前妻の生活費とその子どもの養育費は話し合いで決められたことなのでしょうから、金額は減らせないものとして考えていきます。

ご相談者と夫の手取り収入を合わせると、毎月54万円。そのうち12万円が前妻とその子に支払われているとのことですから、42 万円ほどがご夫婦の毎月の生活費となりますね。一般的なご家庭、DINKSだけではなくお子さんがいるご家庭でも、42万円ほどの手取り額があれば、貯金をしながら生活していけるケースが多いと思います。ですから、今かかっている生活費を見直し、支出を減らすことができると、ご相談者ご夫婦もお金を貯めていくことが可能だと考えます。

どの支出を減らしていくか?

では、どの支出を減らしていくか。それはご相談者ご夫婦のお金の使い方によります。今の支出を把握し、その中で大切にしたい支出、さほど大切ではない支出を見極めていくことから始めましょう。

支出は記録することで把握できます。毎月、何にいくら使っているのか、それがわかればその支出が大切なものなのかどうか、考えていくことができます。大切で優先したい支出がわかってきたら、それ以外の支出を減らしてコントロールしていくことができれば、支出にメリハリがつき、お金を貯めやすくなります。

例えば自分で自由に使える「こづかい」の金額を維持したいと思うのなら、他の支出を減らす、食にこだわりたいのであれば、交際費や娯楽費といった関連しそうな支出を減らしてみる。夫が小遣いから貯めているというお子さんの教育費が夫にとっては大切な支出なら、小遣いに含めず夫婦で計画的に貯め、その代わり夫の小遣い額は減らす。こういうちょっとした工夫が、支出の総額を減らしていくことにもつながる可能性があります。ご夫婦で話し合い、支出のコントロールを考えられると良いですね。

妊娠、出産、育児の費用は手当てなどで賄える部分も

ご夫婦の子どもを産んで育てられるかという不安ですが、支出の改善をし、少しずつ貯められるようになれば、金銭的なことは問題にならないのではないかと思います。

妊娠中は母子手帳をもらうと検診の無料券がもらえます。自治体により無料の範囲や回数が異なると思いますが、全額が自己負担となる妊娠中の検診費用が補助されるのは、かなり負担が軽減されることになります。それでも妊娠前より幾分か負担増となることが気になるかもしれませんが、支出の見直しでカバーできる範囲です。

出産時は入院費用が総額で50万円、60万円とかかることが一般的です。ですが出産費用の一部として健康保険から42万円の出産一時金がもらえますので、多くの産院では入院費用と相殺される手続きをするのが一般的です。つまり、差額の負担で済みますので、あまり気構えなくても大丈夫。毎月少しずつ貯めたり、ボーナスをやりくりして残しておければなんとかできます。

産休・育休手当も活用すればなんとかなる

出産・育児で仕事を休む期間も、手当が支給されます。産前産後休暇では「出産手当金」として、健康保険から休んだ期間の給料の2/3の金額がもらえます。その後、育児休業を利用するなら雇用保険から「育児休業給付金」がもらえます。休業開始から半年は給料の67%、その後は50%です。産前産後休暇、育児休業期間は、健康保険料や社会保険料は免除になります。

十分に保障されているとは言えないかもしれませんが、ある程度はカバーされています。今から少しずつ支出の見直しなどができていれば、大きく不安に思わなくとも良いと思います。

老後資金は、積立して貯めていく

これから準備したい資金はいくつもあるでしょうが、現状であれもこれも一度にこなしていくことは無理だと思います。今はまず、出産等にかかるお金と平行することが可能な、老後資金の準備に取り掛かることから始めましょう。

老後資金は貯金で貯めていくことも良いですが、万が一のことがあっても生活を守れる貯金ができているのなら、長期・分散の投資でこつこと積み立てていくと良いでしょう。多額ではなくとも、貯金するお金の一部を積立投資に回す程度で構いません。早く始めれば、時間を味方につけ、複利の力で資産を増やしていくことができます。

国の非課税投資制度である「つみたてNISA」や、税優遇がある「iDeCo(個人型確定拠出年金制度)」を利用しても良いでしょう。

今は大変かもしれませんが、いずれ養育費の支払いはなくなります。前妻の生活費も、いつまでの約束なのか夫に確認してみると、安心できるかもしれませんね。今はできる限りのことに取り組み、支出負担が減ってから加速させていくという順番で、お金を貯めて行ってはいかがでしょうか。

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