8割の人は十分な老後資金を貯められない?老後資金と貯蓄額の厳しすぎるギャップ

昨年、金融庁の報告書で「老後資金に2000万円が不足することになる」と公表され、それまで以上に「老後資金」について議論されるようになりました。

今の生活をやりくりするだけで精一杯の人が多い中、老後資金として2000万円もの大金を貯えるのはかなり厳しいように思いますが、前述の報告書には冷酷な現実が書かれており、誰しもがこれに向き合って暮らしていけなかければなりません。

今回はコンサルティング会社・JSKパートナーズが全国の30~50代まで1081名の男女を対象にした調査結果を元に、多くの人が考える「老後資金」「貯蓄額」の実態に迫ります。


8割以上の人が「老後資金2000万円」を用意できない?

まず、今の生活の中で「老後資金がどれくらい確保できていますか?」の調査結果です。ここでの回答を見ると、8割近くの人が「全くできていない(41.4%)」「あまりできていない(37.7%)」と回答しています。

この回答に、「うちだけじゃなかった!」と安心する方もいるかもしれませんが、お金がないと生きていけないのは明々白々。多くの人は現実的にどれほどの資金を確保できるのでしょうか。次に「老後資金はいくら確保できそうですか?」の回答を見てみましょう。

確保できそうな老後資金は「300万円未満(39.3%)」が最も多く、次に「500万円以上1,000万円未満(15.6%)」、1,000万円以上2,000万円未満(14.0%)」「300万円以上500万円未満(11.7%)」という結果になりました。

冒頭での「老後2000万円が必要」が正しいとすると、8割以上の人が到底及ばない貯えしかできないのが現実ということになります。

300万円未満の貯蓄の人が半数以上?

次に、どれだけ親しくてもなかなか聞けない「現在の貯蓄額を教えてください」についての回答結果です。

「100万円未満(41.6%)」と回答した方が最も多く、次いで「1000万円以上(18.3%)」「100万円以上300万円未満(15.1%)」と続きます。

要約すると、100万円未満の貯蓄の4割を含む、300万円未満の貯蓄の人が半数以上である一方、2割弱の人だけが堅実に1000万円以上の貯蓄をしていることになります。

調査の対象者が30~50代と幅広く、就労年数に大きな開きがあること、「実際の貯蓄額」はえてして低く申告する傾向もありそうなので、リアルな平均値を把握することは難しいと考えられます。しかし、意外と多くの方が「老後資金」の確保、「貯蓄」が出来ていないという傾向はよくわかりました。

「年金だけで生活できた」のは今や昔?

調査では、大半の人にとって、限られた収入の中から貯蓄に回せる額が極めて少ないことを感じます。そんな中で頼りになりそうなのが年金です。就労時にコツコツ払い続けた年金ですので、必ずバックがないと困りますが、「果たして本当に受給できるのか」という声は後を立ちません。このことから「2000万円もの老後資金の足しになるのだろうか」と、年金に対して疑念を抱く人は多いと思います。

そこで、「ご自身が年金を受給する際、現在と比較してどのように変化していると思いますか?」と「将来、生活費として年金をどのくらい当てにできると思いますか?」の回答を見てみましょう。

まず年金受給の変化では8割近くの人が「減っていると思う(78.6%)」と回答。また、年金が老後資金の当てになるかどうかでは、3割近くの人が「当てにするつもりはない(29.1%」とすでに諦めモードに。

このことから、以前はよく耳にした「年金生活」というワードはもはや死語であり、これからは年金だけで暮らすことはまず難しいと考えるべきでしょう。やはり老後の資金は働き続ける、投資などで得られるようにし、年金に依存せず確保できるようにするのが賢明です。

年金制度に期待していない人多数

他方、年金制度の将来性に対する多くの人が抱く思いに関する結果も出ています。「今後の年金制度に期待していますか?」というものですが、8割近い人が「期待していない(77.9%)」と回答。その理由を下記にいくつかピックアップします。

「年金受給される年齢が上がっていきそうだから(30代女性・専業主婦)」
「これから少子化になり自分達が老後になった時はもっと年金が減らされると思うから(30代女性・専業主婦)」
「国の財政がコロナでより厳しくなったから。例え年金が増えてもさらに税金が高くなっていそう(30代女性・パート・アルバイト)」
「国はいっぱい借金してるし、少子高齢化だから(40代男性・無職)」
「今の制度だと年金自体が破綻しそうだから(50代男性・会社員)」

少子高齢化や、新型コロナウイルス対策で国の財政負担が増えていることもあり、将来の年金制度に対して悲観する声が多いようです。

生業以外の投資や副業も「老後資金」覚悟の手段?

ここまでの結果を鑑みると、多くの人にとって老後資金の確保は八方塞がりのように映りますが、そんな中で注目されている投資についても興味深い結果が出ています。次に「老後資金を確保するために、投資をしていますか?」のデータを見てみましょう。

7割以上の方が「していない(72.9%)」と回答。投資にも様々な種類があり、それなりの専門知識やリスクが伴うことから手を出すことに躊躇している人も多そうです。しかし、これまでの通り「貯蓄もしにくい」「年金にも期待できない」今です。ローリスクの投資や副業をスタートさせ、生業とは別の収入を考えることは、老後資金確保に繋げるための数少ない手段の一つであるかもしれません。

一生にかかる試算の見直しと実行を

今回の調査結果を要約すると、「100万円未満の貯蓄額の人が4割」「しかし、年金にも期待していない」ということになります。人生100年時代とも言われる今ですが、寿命が伸びることと比例してお金もかかります。

他方、働ける年齢には限界があるため、収入よりも支出額のほうが上回る日は必ずやってきます。できるだけ早い時期に、一生にかかる試算の見直しと貯蓄などの実行を行い、より安心して過ごせる「老後資金」確保を目指しておいたほうが良さそうです。

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