『聖なる犯罪者』出来心の嘘で勘違いされ…

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 昨年のアカデミー賞で、作品賞も受賞した『パラサイト 半地下の家族』と国際長編映画賞を競ったポーランド映画だ。主人公は、少年院に服役中に熱心なカトリック教徒となった20歳の少年。神父になりたかったが、前科があると聖職に就けない。仮釈放中に立ち寄った教会で彼は、はずみでついた嘘から新任の司祭と勘違いされ…。

 ストーリー自体は真新しいものではない。出来心でついた嘘により後戻りできない状況に陥り、我々観客はいつバレるか?と固唾をのんで見守る…というのが基本となる展開だ。そこに本作の場合は、信仰に対する問題提起が加わる。つまり、偽物が語る言葉の方が本物よりも民衆に響く、という宗教の本質を突くテーマ。ただし、このテーマがキリスト教圏ではない日本で観客の心にどこまで届くかと考えると、取り上げるべきはそこではないだろう。

 本作の映画としてのキーワードは、“自然光”だ。常に窓や出入口が画面に映り込み、屋内にいても外の光が絶えず意識される。言い換えれば、内が外に浸食され続ける映画。それがストーリーの持つ居心地の悪さと共鳴し、我々の主人公へのイライラ感を募らせるのである。浸食が意図的な演出であることは、告解室のシーンで外からの声が不気味に強調されていることからも明らか。そして、だからこそ、この演出の真骨頂といえるラストが、奇妙な解放感をもたらすのだ。必見! ★★★★★(外山真也)

監督:ヤン・コマサ

出演:バルトシュ・ビィエレニア、エリーザ・リチェムブル

1月15日(金)から全国順次公開

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