「国や都から圧力」 杉並区長が成人式で一番言いたかった〝小池のこと〟

成人式強行は小池都知事へのあてつけか?

11日に全国各地で行われるはずだった成人式は、中止や延期になった自治体が多かった。その一方で、東京23区で唯一となる成人式を開催した杉並区の田中良区長(60)が、検索トレンド上位になるなど存在感を増している。田中区長は成人式のあいさつで国や都の「圧力」を暴露。同時に区長が小池百合子都知事(68)の無策を告発する記事も出た。2人の間には不仲説が浮上しているが、成人式開催の判断に影響していたのか。

JR荻窪駅から徒歩数分の杉並公会堂が23区で、ただ1か所の成人式会場になった。振り袖やスーツを着た男女が多く集まり、久しぶりの友との再会を楽しんだ。式典は例年2回に分けて行われるところを4回にして、1席空けて着席するなどコロナ対策を心掛けた。1回目は約500人が来場した。

新成人を前に田中区長が話したのは、晴れやかな舞台には不似合いな、きな臭い政治の話だった。「杉並区が成人式を強行したというムキもあるが、事実は違う」と切り出し「事実は開催予定の自治体に国と都が強硬に(中止を)迫って、結果的に私だけが残った」と胸を張った。

さらに「何人かの区長が『外堀を埋められた。悔しい』と電話をしてきた。(開催の)約束を果たせたのは私一人だけ」と、国や都が各区に圧力をかけたことを暴露したのだ。

田中区長は国や都が成人式後の酒宴や会食を避けたいと考えていることを指摘しつつ「私は少し考えが違う。まずは、あなたたちを信頼したい。その上で約束してほしい。酒盛りは控えて家に帰ってください」と訴えた。

式典後、新成人の男性は「信頼されているので気を引き締めたい。同窓会も中止になっているし、家に帰ってご飯を食べたい」。別の男性も「一人だけ(成人式を)やったという区長の話は心に響いた。僕らのために、よくやってくれたなって思う」と歓迎した。

一方で同日の文春オンラインには「『小池都知事は責任を果たせ!』命の選別が迫る医療現場…杉並区長が“無策すぎる都政”を告発」という記事が掲載された。区政関係者は「田中区長と小池都知事の仲の悪さは有名ですよ」と明かした。

2人の険悪な関係が成人式開催の判断につながったのか。「知事の言うことなんか聞けない」との思いがあったのか?

この疑問に、成人式を担当する杉並区役所子ども家庭部幹部は「仲がいいとは言えないかもしれないが…」としつつ「成人式については(仲の悪さは)影響していません。区長は開催に意欲があり、我々現場も一生に一度のことなので、ぜひやってあげたいと思っていました」と影響を否定した。

どうして仲が悪いのか。前出の区政関係者は「スタンドプレーが得意な小池氏と実務家肌の田中区長では、そもそも政治姿勢が違います。区長から見ると小池氏は言葉が軽すぎるのです。それが、このコロナ禍でより鮮明になりました」と指摘した。

田中区長は周囲の区職員に「都はコロナに気を付けましょうというが、具体的に何が必要なのかエビデンスを出してくれない」と常々不満をこぼしていたという。

「コロナ禍の初めのころですが、マスクが足りないということで小池氏が都内全自治体にマスクを配ったのです。しかし、2日分にしかならない量で、しかも杉並区にはコロナ対策に使えないようなマスクが来たので倉庫行きになりました。実態を知らない小池氏の言葉に合わせるためだけに、現場が適当なマスクを送ってるのです」(前出の区政関係者)

田中区長は都議を務め、議長も経験。山田宏前区長の辞職に伴って区長に転身した。それだけに都政には十分通じており「歴代の知事と比べてどうなんだ?」と小池氏の力量に疑問を持っていたという。

「あてつけで成人式を開催したということは絶対にありません。成人式については小池氏だけではなく国からも要請はありましたから」(前同)

小池氏だけではなく国にもモノ言う区長のようだ。頼もしくはあるが、参加した新成人から感染者が出た時は責任を問われることになる。

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