GG賞逃した巨人・岡本が満点 アナリストが選ぶ名手は?【二塁&三塁&遊撃編】

巨人・岡本和真(左)と西武・源田壮亮【写真:荒川祐史】

遊撃手では西武の源田が4年連続で最高評価に

米国には、データアナリストが選手の守備を分析し、その結果から優秀守備者を表彰する「Fielding Bible Awards」という賞が存在する。これに倣い、株式会社DELTAではアナリストの協力のもと、「1.02 FIELDING AWARDS」というNPBの優秀守備者を表彰する企画を開催している。

「1.02 FIELDING AWARDS」では、今年は9人のアナリストが各々の分析手法で選手の守備貢献を評価。今季各ポジションを500イニング以上守った12球団の選手を対象に順位付けし(1位:10点、2位:9点……)、最も多くのポイントを獲得した選手を最優秀守備者とした。今回は遊撃・三塁・二塁の各ポジションの結果を2位以下の選手も含め紹介する。

遊撃手部門ではパ・リーグのゴールデン・グラブ賞を獲得した源田壮亮(西武)が12球団最高の評価を得た。源田はこれでルーキーイヤーから4年続けての受賞。データの面から見てもNPBで最高の守備力をもっていることを証明し続けている。

2位はセ・リーグのゴールデン・グラブ賞を獲得した坂本勇人(巨人)。セパのゴールデン・グラブ賞獲得選手がワンツーフィニッシュと、記者投票とデータ分析による投票の結果が一致する形となった。3位以下には、京田陽太(中日)、安達了一(オリックス)と上位常連選手が続いている。4位までの票は、ほぼこの4選手に集まった。

打球処理評価を、捕球するまでと送球に分けたアナリストの分析では、この4選手それぞれに特徴が表れていた。源田については捕球、送球ともに圧倒的だった昨季ほどの成果は残せなかったよう。その一方で併殺をとる貢献でダントツの評価を得ている。坂本は捕球よりも送球による貢献が大きかったようで、アウトにするのが難しい長い距離のスローイングでも、ほかの遊撃手以上にアウトを増やしていた。

二塁手、三塁手、遊撃手の得点ランキング【画像提供:DELTA】

三塁手は岡本がゴールデン・グラブ賞の中日・高橋周を上回る

一方の京田は捕球するまでの能力が非常に高く、この部門に関しては12球団トップクラスの貢献を示していた。安達は加齢もあってか数年前ほどではないものの、どの項目をとっても安定して高水準の成績を残している。遊撃手としてはベテランの領域に入ったが、いまだ守備力は健在と言えるようだ。

三塁手部門は全アナリストが1位票を投じ、90点満点を獲得した岡本和真(巨人)が受賞している。セ・リーグのゴールデン・グラブ賞は高橋周平が獲得したが、データ分析による評価では岡本が上回った。

アナリストの分析によると岡本は三塁線、そして三遊間と両サイドの打球をいずれも平均より高い割合でアウトにしていた。一塁からのコンバートが見事な成果を挙げている。一方の高橋は三塁線の打球においてやや処理率に難があった一方で、三遊間については岡本をも上回る高い水準の処理能力を見せていた。

3位以下はパ・リーグのゴールデン・グラブ賞受賞者の鈴木大地(楽天)、そして2013年から続いていたゴールデン・グラブ賞獲得が途絶えた松田宣浩(ソフトバンク)の順に。松田はアナリストごとに評価がはっきりと割れ、球場ごとのゴロ処理のしやすさを分析に組み込んだアナリストからの評価が伸び悩んだ。三遊間のゴロ処理に課題があるようだ。

一方で球場ごとのゴロ処理のしやすさを考慮した結果、評価を伸ばしたのが大山悠輔(阪神)だ。大山は今回のランキングでは6位という結果に終わったが、三遊間のゴロ処理が難しい甲子園を本拠地にしてプレーしていることを補正すると、上位クラスの打球処理能力を見せたという意見もあった。

広島・菊池涼介【写真:荒川祐史】

二塁手部門で3位だった広島・菊池涼に見られる守備スタイルの変化

二塁手部門では外崎修汰(西武)が受賞となった。外崎は初めてゴールデン・グラブ賞を受賞したが、この「1.02 FIELDING AWARDS」においても初めてトップ評価を得た。外崎は非常に高い打球処理能力を見せながら、併殺を奪う貢献においてもほかの二塁手を突き放した。遊撃手部門において源田の高い併殺を奪う貢献について触れたが、外崎・源田の西武の二遊間コンビはこの部分で大きなアドバンテージがあったようだ。

外崎に次ぐ2位は吉川尚輝(巨人)。吉川は外崎に匹敵する打球処理能力を見せたが、出場機会が少なかったこと、また併殺によって上積みを作れなかったことがトップに届かない要因となった。ただ吉川に1位票を投じたアナリストもいた。

シーズン無失策記録を達成し、8年連続でセ・リーグのゴールデン・グラブ賞を獲得した菊池涼介(広島)は、3位という結果に終わっている。

アナリストの分析によると、菊池のアウト獲得は送球による部分が大きく、打球に追いつくことを含めた捕球に関しては、外崎や吉川にやや後れをとっているよう。かつて二塁手のシーズン補殺記録を樹立するなど、守備範囲広くダイナミックなプレーのイメージがある菊池だが、守備のタイプとしては変容が見られている。

また、あるアナリストは走者を塁に置いた状況で、より先の塁をアウトにする判断ができていたかどうかを評価に組み込んだ。この分析では、山田哲人(ヤクルト)の的確な判断能力が示される結果となっている。ただ採点は振るわず、山田は二塁手の8人の中で5位という結果に終わっている。(DELTA)

DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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