井岡一翔が出場停止などの〝厳罰〟にならなかった理由とは? JBCから「厳重注意」処分

入れ墨がハッキリ見えてしまった井岡一翔

日本ボクシングコミッション(JBC)は22日、大みそかのWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチで試合中にタトゥーが露出した王者の井岡一翔(31=Ambition)を厳重注意処分にしたことを発表した。

JBCの倫理委員会は処分の理由について、田中恒成(25=畑中)と戦った試合で「入れ墨を隠す塗布物が剥がれ落ち、左腕の入れ墨が露出したまま試合を続行した。このことはJBCルール第95条2号に抵触するもの」とした。

そのルール第95条では「次の各号に該当するボクサーは、試合に出場することができない」と「欠格事由」が明記されおり、2号には「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」と具体的に記載されている。

一翔のリング上での姿は明らかにこれに抵触した。この件をめぐっては年明けからボクシング界を飛び越え、芸能界を含む様々な業界からの意見が噴出。ネット上では「厳罰で当然」といった声も多かったこともあり、出場(ライセンス)停止などのない「処分」には予想外に軽い、との印象を与えた感もある。

元々JBCでは、入れ墨についてはレーザーで焼くか、皮膚移植をするかで「完全に消す」ことしか認めていなかった。

それがあまりに広範囲に及んで医者が「これ以上の移植は無理」と判断したことがあった。ルールを厳格に適用するとリングに上がることはできない。だが「皮膚移植をする努力までした選手を『まだ見えてる』との理由で排除してしまうのは正しいことか? となり、それならば塗布剤を使うことで見えないようにしなさい、となった」(安河内剛JBC事務局長)経緯がある。

それでも汗などで流れ落ちて入れ墨(タトゥー)が見えるようになった選手が処分を受けたケースは過去にもあるが「例えばダウンした相手を殴った、というような違反とは性質が明らかに違うので、過去にもサスペンド(出場停止)などの処分が出たことはありません」(同事務局長)。

消す(隠す)努力をしたのが結果的に露出してしまった、というのが前提。競技の本質や安全性に影響を及ぼすものではなく、過去の事例に照らせば一翔の処分は妥当となる。

世界戦ではJBCのスタッフが控え室に立ち会い、バンデージの巻き方が適切かなどをチェック。一翔の場合ではタトゥーへの処置も確認した上でリングに上げる。2019年大みそかの試合ではひじ側の部分などはかなり入念に隠していたため「今回もしっかりしてくるだろう」との〝性善説〟があり、これが結果的にチェックを甘くし、試合の早い段階から露出することになった。

この点については「JBCにおいても管理を徹底すべきだったことも踏まえ」(安河内事務局長)と不備を認め、他の選手を含めての再発防止策として「JBC指定の塗布剤を使用させるか、指定業者による塗布施術を受けてもらうなどの手当てを考えていきたい」(同事務局長)との対応をしていく。

今回の問題を巡っては、タトゥー(入れ墨)がある選手の試合出場をJBCが禁止していることへの意見が各所から出た。だが、JBCは今回、一翔がルールに抵触してタトゥーを露出させたことだけを倫理委員会での議論、処分の対象とした。安河内事務局長は「今回、入れ墨(タトゥー)についての様々なご意見をいただいたが、現時点でJBCルールを変更することは考えていない」とコメントした。

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