金本のまったく浸透しなかった愛称「西の最終兵器」 「鉄人」に違和感で自ら考案も…

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「北の最終兵器」ボブチャンチンをイメージ?もはや“風物詩”だった本紙記者締め

【球界平成裏面史・平成16年の金本知憲(1)】リーグ連覇を目指した平成16年(2004年)の阪神で、開幕から全試合で4番を務めたのが移籍2年目の金本知憲外野手だった。「大役」に指名したのは就任1年目の岡田彰布監督で、虎の4番を託された金本にとっては「特別な一年」だったに違いない。

前年の星野仙一監督の下でも4番に座った経験はあったが、わずか2試合だけ。それ以外の138試合で3番を務め、前を打つ赤星憲広の盗塁をアシストするなど器用な役割をしてきた。

新指揮官からは「4番で豪快な一発を見せてくれ」とオーダーされ、金本は意気に感じて快諾した。憧れの存在で、宿敵・巨人の4番を張っていた清原和博と「同じ4番として勝負してみたい」との思いも強かった。

この平成16年は阪神OBでもある三宅秀史の700試合連続フルイニング出場の日本記録更新にも注目が集まっていた。開幕前の時点で残り88試合と迫っており、実際に8月1日の巨人戦で記録を塗り替えて名実ともに「鉄人」の称号を得るわけだが、照れもあったのか、開幕前には本紙にこんな悩みを打ち明けていた。

「実は『鉄人』と呼ばれるのは好きやない。前から違和感があったんよ。鉄人は衣笠(祥雄)さんのこと。恐れ多いし、二番煎じは好きやない。現役で言えば、俺の中で鉄人は清原さんのイメージやけん」

阪神移籍後の金本には「鉄人」以外にも「虎のサイボーグ」「ロボコップ」といった無理やりのニックネームもあった。ただ、その肉体は長い年月をかけてじっくりとつくり上げたものであり、実態にそぐわない呼び名には違和感もあったのだろう。「わしゃ、人間や。『ロボコップ』って…ロボットでも警官でもないっちゅうねん。どっちかといえば、捕まえるより捕まる方やわ」と笑い飛ばしていた。

一方で、金本は新ニックネームを自分で考えているとも明かした。つなぎ役に徹した前年と決別し、4番として新たなシーズンにかける思いを凝縮した攻撃的なネーミング――。「『虎のリーサルウエポン』『西の最終兵器』でもええな。カッコいい。強そうで攻撃的な感じがするやないか。今年はこれでいこうや。どんどん書いて広めてくれ。理由か?『北の最終兵器』という格闘家がおったやろ。イゴール・ボブチャンチンじゃ。メチャクチャ強かった。最初に見たときはびっくりしたわ。俺もあのイメージやね」。金本もノリノリで本紙に新ニックネームの拡散と定着を依頼してきた。

平成10年にPRIDEのリングに初参戦したボブチャンチンは名だたる猛者たちを強烈な「ロシアンフック」で次々となぎ倒し、総合格闘技67試合で56勝(41KO、7タップアウト)を誇った。金本は打席時の登場曲にヴァンダレイ・シウバの入場曲を使用してきたほどの格闘技ファン。余談ながら、練習前に格闘好きの本紙記者に締め技をかけ、悶絶させる姿は周囲を和ませる「風物詩」でもあった。

しかし、肝心の「虎のリーサルウエポン」「西の最終兵器」は、巨人・高橋由伸の「ウルフ」以上にまったく定着しなかった。書いているのは本紙だけ。世間に広がらなかったのは残念だが、やはり金本には「鉄人」の称号が一番よく似合う。ただ、この年の金本は多くのことと戦っていた。=続く=