五輪「米フロリダ代替開催」の実現度…専門家に聞いた

五輪代替開催は実現可能なのか

新型コロナウイルス禍で今年夏の東京五輪開催が難局を迎える中、またも騒動が勃発した。米フロリダ州のジミー・パトロニス最高財務責任者(CFO)が突如、五輪の代替開催地として名乗りを上げて波紋を広げている。同氏は国際オリンピック委員会(IOC)に対し、代替開催の検討を促す書簡を送付。日本としては予期せぬ〝対抗馬〟が現れた形だが、本家の大会組織委員会の反応は? さらに実現の可能性を専門家に聞いた。

これまで東京五輪の中止を避ける方策として無観客や再延期、2024年スライド開催など様々な意見が出る中、ウルトラCの仰天プランが急浮上した。日本では国民の8割以上が開催に反対という状況。「ならば俺たちが…」とばかりに、米フロリダ州が代替開催地に立候補したのだ。

パトロニス氏はIOCのトーマス・バッハ会長(67)にあてた書簡の中で「日本が五輪開催を再考している今、絶好の時だ」とつづり、コロナ感染拡大の状況下でもバブル方式でプロバスケットボールNBAなどのスポーツイベントを開催をした実績を強調。ディズニー・ワールドが安全に運営されていることなども加え、同州の大会開催能力をアピールしたのだ。

これに対し、市民からは猛反発が巻き起こった。すでに同州ではコロナで2万5000人以上が亡くなっている。同氏のツイッターには「あなたはこの州のリーダーシップを変えなければいけない、いい例だ」「我々の税金とスタッフの時間をこの手紙を書くことに費やすなんて」「五輪招致なんてやめてください」とクレームが相次ぎ、たちまち大炎上した。

一方、日本国内ではネット上で「もう面倒なので渡しちゃおう」「どうぞどうぞ!」と多数の前向きな意見がある一方で「このブラックジョークは笑えない」と批判的な声も上がるなど賛否が渦巻いている。そんな中、〝本丸〟の大会組織委はどう見ているのか。本紙が複数の関係者を直撃すると「政治的パフォーマンス、もしくは話題作りでしょう」「(前大統領の)トランプさんがいるフロリダだし、何かを狙ったプロパガンダでは?」と一様に冷ややかな視線を向けている。

では、実際に代替開催は可能なのか? 五輪の内情に詳しい立教大学法学部教授の早川吉尚弁護士(52)は「日本は五輪の主催者ではなく場所の提供者。日本で開催できなければ、IOCの判断で開催地を移すことはルール的にOK」としながらも「物理的に準備が間に合うはずがない。競技会場には条件をクリアする審査が必要で、スポンサーの問題もある。それに入国手続きや会場間の移動手段(の確保)など、全てを半年でやるのは現実的に不可能です」と断言した。

仮にフロリダ州が本気だったとしても、実際には五輪の代替開催など無理。真剣に考えるだけ無駄ということか。

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