感染症法改正に長崎県内医療関係者 病床確保へ十分な支援を 人手や風評被害懸念

県内8医療圏ごとの確保病床数

 3日成立の感染症法改正で、国や都道府県が新型コロナウイルス病床の確保を医療機関へ「勧告」したり、正当な理由なく応じない医療機関名を公表したりすることが可能になる。政府は財政支援や任意調整優先を強調するが、民間病院は風評被害で経営が揺らいでも公的支援を得にくく、感染対策や人手確保が難しいケースも多い。長崎県内の医療関係者からは、慎重な運用や十分な支援、対策を望む声が上がっている。
 県内のコロナ専用病床は現在、最大時で計421床=表参照=。県が昨年7月策定した確保計画では計395床だったが、患者急増を受け先月、26床拡大された。一般診療への負担を減らすため、本土と離島の計5区域ごとに感染状況に応じた5段階(0~4)の「フェーズ」を設定。フェーズが上がると、各医療機関が専用病床を増やして対応していく仕組みだ。
 これまでは県の「要請」に基づき、各医療機関がこうした体制を取ってきた。県医療政策課は「県内では地域ごとに医療機関同士の連携が取れており、効率的に病床を確保してもらっている。ただ、その上で数が足りなくなれば、手段の一つとして勧告を検討することはあり得る」とする。
 軽症、中等症中心にコロナ患者を受け入れている長崎市の病院院長は「県内は今すぐに専用病床を増やす必要はないが、クラスター(感染者集団)が発生すれば、すぐに病床が足りなくなることもあり得る。受け入れが難しい病院への支援を含めて考えるべきだが、病床確保のための対策は必要」と一定理解を示す。
 同市の民間救急病院幹部は「新型インフルエンザが発生した2009年以前に建った民間病院は、構造的に感染症対応を想定していない。(コロナ用と一般用を隔てる)ゾーニングが難しい」と指摘。「コロナ用を数床つくるのに、一般病床を20床程度つぶして看護師を割り当てる必要がある。コロナ以外の病気にどう対応するか」と人材面の課題についても語る。
 同市の別の民間病院幹部も「専用病床を用意するには、人手や装備を含めた受け入れ準備が必要。強制的に『確保を』といわれても、難しい」と戸惑う。
 経営や職員の士気に影響する風評被害、差別の懸念も、受け入れに二の足を踏む大きな理由となる。コロナ患者を受け入れている県央地区の病院幹部は「感染者を出した医療機関は患者が来なくなるばかりか、地域で差別的対応を取られることさえある。だから患者受け入れに手を上げない。強制的な措置を導入する前に、コロナに関わる医療者への差別をなくすことが先決だ」と語気を強めた。

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