休止の特養ホームで川崎市、法人と再協議検討へ

市が休止を決めた「陽だまりの園」の入居者家族への説明会=川崎市高津区

 川崎市が民営化を目指していた特別養護老人ホーム2施設の休止を決めた問題で、市は4日、このうち「陽だまりの園」(同市高津区、定員50人)について、法人との再協議の可否も含め検討すると明らかにした。転居先の施設を探すための入居者家族らへの意向調査も保留する。同日始まった家族らへの説明会で、コロナ禍の転居に対する不安の声が相次いだことを受けた。

 同施設に関する説明会は3日間予定され、初日は家族や成年後見人ら約30人が参加。市側が休止に至る経緯を説明し、転居先に関する意向調査への協力を呼び掛けた。

 高齢者事業推進課の担当者は、施設の譲渡民設化に向け「(市として)条件の緩和ができなかったというのが事実」と、運営法人「照陽会」との協議を説明。小規模施設のため収益の貯蓄ができないにもかかわらず、運営期間終了後の建物取り壊しや大規模修繕への負担など、法人の不安に応えられなかったとした。

 質疑応答では、「園に入る際に10カ所ほど施設を見学したが、今はコロナ禍で見学できない」「せめて感染が落ち着くまで延期できないか」などと、性急に転居先を決めることへの不安の声が相次いだ。95歳の母親が入居している男性は「休止なんて夢にも思わなかった。なんとかもう一度話し合って決めてほしい」と訴えた。

 こうした声を受け、市長寿社会部の相澤照代部長は「一度持ち帰って再検討する」と明言、意向調査の実施も保留するとした。説明会後、神奈川新聞社の取材に「手続き上の難しさはあるが、担当としては皆さんの意見を受けて法人と話し合う気持ちがあり、検討する」と説明、高橋美智代施設長は「市としてこれまで訴えたことに応えていただけるのであれば、話し合う」と述べた。

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