江の島の「サムエル・コッキング苑」にミュージアム新設 藤沢市、ポストコロナ「観光の起爆剤に」

れんが造りの植栽温室の遺構(藤沢市提供)

 藤沢市江の島の島頂部の観光庭園「サムエル・コッキング苑」を巡り、藤沢市は2021年度から2年計画で、園内に残る近代文化遺産を生かした初のリニューアルを行う。明治時代に造られ、東洋一と言われた大規模な植栽温室をイメージしたミュージアムや多目的施設を新設。ポストコロナ時代を見据え、江の島観光再活性化の起爆剤に位置付ける。21年度当初予算案に事業費約8600万円を計上した。

 同園の源流は、英国人貿易商サムエル・コッキングが1882(明治15)年に造成した植物園。コッキングが南国植物を植栽するため巨費を投じて造ったスチーム式の温室は、れんが造りのものとしては現存する唯一の温室遺構で、全体の規模は約900平方メートル。基礎部分のほか、地下に設置された九つの貯水槽などが残っている。

 同園開設者の市と運営者の江ノ島電鉄は2003年の開業以来初めてとなる再整備に当たり、近代の文化遺産として価値が高く、入り口近くの好立地にある遺構に着目。コッキングが植栽にいそしんだ当時の温室をイメージし、遺構の上部に全面ガラス張り平屋造りのミュージアムを建設し、11月のオープンを目指す。

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