田中将大〝鬼のコーチ業〟に楽天投手陣は驚きと称賛 則本昂「いろんなことを聞けた」

ブルペンで則本昂大と話す田中将

連日のサプライズに楽天のキャンプは大にぎわいだ。ヤンキースから8年ぶりに復帰した田中将大投手(32)が8日にブルペンで〝コーチ〟を買って出て投手陣を驚かせた。前日にブルペンで52球を投げ込んだこともあり、この日は軽めの別メニュー調整。しかし、約1時間ほどキャッチボールなどで汗を流すと、ブルペンで仁王立ちした。

田中将の〝コーチ〟は突然始まった。午前11時15分過ぎ。コンディショニングを終えるとサブグラウンドに現れ、そのまま隣接するブルペンに移動。石井監督や小山投手コーチのいるマウンド後方に陣取り、腕を組みながら鬼の形相で投手陣の仕上がり具合をつぶさにチェックした。

練習着ながらもブルペン投球を見守る姿はコーチそのもの。この立ち居振る舞いに圧倒されたブルペンは一瞬にして空気が張り詰めた。田中将は投球練習を終えた投手一人ひとりに個別指導も行ったが、その言動は紛れもなく指導者そのものだった。

この予想外の行動に若手投手陣も感激した。日米を股にかけたレジェンドに視線を注がれ、助言までもらった5年目の酒居は「客観的に話しかけるのは雲の上、という感じで緊張した」と言いつつも「質問したら的確に的を射て答えてくださって。『気軽に話しかけてこいよ』って言われていた通り。本当に話しやすい印象でした」と田中将の姿勢に感銘を受けた様子だった。

また、前日に田中将から直々にスプリットの握りを伝授され、さっそく試投した昨季序盤に守護神を務めた森原も「『明日投げてみます』と(田中将に)言っていたのですが、それで見てくれていたので」と自身の投球に注視してくれたことに感謝しきり。ここ2年不調で完全復活を期す則本昂も「いろんなことを聞けたので良かった。田中の助言? フォームを固めるためなので。しっかりキャンプ中に自分のものにしたい」と気持ちを新たにした。自身の調整をよそに若手に寄り添った田中将も面目躍如といったところだろう。

エースはコメントを残すことなく球場を後にしたが、石井監督は田中将の行動に関して「選手同士のコミュニケーションが一番成長する会話だと思うので」と絶賛。その上で「(選手は)赤ちゃんじゃないんで。成長する過程として(田中将に)聞きに行く勇気は大事だと思う」と今後も積極的に接触していくよう投手陣に呼びかけた。

ヤンキースから楽天への電撃加入に誰もが驚がくしたが、チーム合流後にコーチぶりまで発揮するとは…。田中将が巻き起こす旋風は当分収まりそうにない。

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