「ポスト森喜朗」大穴に小谷実可子氏が急浮上

「国際派」の小谷実可子氏

女性蔑視発言で世界中から批判を受けて辞任を表明した東京五輪・パラリンピック組織委員会森喜朗会長(83)の後任を巡って大揺れだ。森氏から指名された元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏(84)で決まりとみられたが、世間の猛反発を浴びた同氏は急転、辞退を表明。今後は「候補者検討委員会」で議論される。一方、委員長に決まった御手洗冨士夫名誉会長(キヤノン会長)は85歳と高齢な上、森会長と昵懇の仲だけにまたも疑問の声が上がる中、注目の次期会長は誰が適任なのか。本紙の取材で〝大穴候補〟が浮上した。

3日の女性蔑視発言から10日。森会長は12日に都内で開催された組織委の評議員会・理事会の合同懇談会で「私の不適切な発言で混乱させてしまいました。理事、評議員の皆さま、多くの皆さま方にご迷惑をおかけしたことを誠に申し訳なく存じております。大事なことは五輪をきちんと7月に開催することであり、諸準備に私がいることが妨げになってはならないと思います」と辞任を表明した。

気になる後任だが、森会長が後任に直接指名した川淵氏は、世間から「密室会議だ」などと批判が殺到。政権の介入もあったとされ、11日には受諾していた川淵氏も急転、辞退を表明。組織委は「公平性」と「透明性」を担保するために「候補者検討委員会」を設置した。委員長には御手洗名誉会長が就任。男女比はほぼ半々とし、アスリート中心で国、都、日本オリンピック委員会(JOC)関係者らで構成される。同委員会で後任の人選を行い、3月22日の理事会で承認できるように進めていく見通しだ。

ただ、森会長の年齢を上回る高齢者の委員長起用にネット上では「老人大国万歳」などと諦めに近い叫びも聞かれた。ある組織委幹部も「とても透明性があるとは言えない。まるで茶番劇を見せられているようだ」と苦言を呈する。このため組織委内では、よりフレッシュな人物を新会長に求める声が高まっているという。

現段階で本命視されるのは橋本聖子五輪相(56)だ。スピードスケートの五輪メダリストで「五輪の申し子」と呼ばれただけに適任のように見えるが、政界やJOCなどスポーツ界の評価は芳しくない。ある競技団体幹部は「(現役引退後の)活動で何も実績を残していない。組織委会長として実力は疑問視せざるを得ない」とぴしゃり。さらに日本スケート連盟会長だった2014年ソチ五輪時に、フィギュアスケートの高橋大輔にキスを強要したと「週刊文春」に報じられたことを早くも中国メディアに蒸し返されている。

もう一人、候補に名前が挙がる競泳金メダリストの鈴木大地氏(53)もスポーツ庁長官時代に〝お飾り〟と陰口をたたかれるなど実務能力を疑問視される。

そこでにわかに注目される〝大穴候補〟は、小谷実可子スポーツディレクター(54)だ。小谷氏は前出の2人と同様に五輪メダリスト。88年ソウル五輪のアーティスティックスイミング(シンクロ)で2個の銅メダルを獲得した。海外での知名度は抜群で、さらに「英語ペラペラ」なだけに国際舞台で国際オリンピック委員会(IOC)幹部らと直接コミュニケーションを取れる武器も持ち合わせている。

昨年10月、組織委がIOC委員のセバスチャン・コー氏(64)らの海外派遣団を招いた際には、面談にハッピを着て飛び入り参加。堪能な英語を駆使して来賓を大いに盛り上げた実績がある。IOCのトーマス・バッハ会長(67)との交渉も通訳なしなら、そごも生じない。何より女性蔑視発言による日本の古い体質が浮き彫りになった今、華やかさのある小谷氏は女性リーダーにうってつけだ。会合の出席者からも〝小谷推し〟の声が挙がっている。

組織委の武藤敏郎事務総長(77)は12日の会見で新会長の資質について「こういう状況での交代なので、五輪、パラリンピックについて何らかのご経験があり、ジェンダーイコーリティー(男女平等)、ダイバーシティー(多様性)、インクルージョン(包括性)の認識が高い方が必要」と語っていたが、〝シンクロの女王〟ならまさにピッタリだろう。

森、川淵、御手洗による〝252歳トリオ〟の会長人事を目の当たりにした関係者は「とにかく若返りが必要だ」と訴えるが、コロナ禍で問題山積みの本番まで残り5か月。悠長に議論している暇はないはずだが…。

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