佐世保重工業(SSK)新造船休止へ 事実上の撤退、希望退職250人募る

2022年1月で中核事業の新造船を休止する佐世保重工業。地元経済への影響が懸念される

 佐世保重工業(SSK、佐世保市)は12日、2022年1月で中核の新造船事業を休止すると発表した。これに伴い今年5月から、希望退職者250人を募る方針。新造船需要と船価の低迷が長期化する中、収益改善に向け大規模な事業改革と人員整理を進める。
 同社は14年10月に造船中堅の名村造船所(大阪市)の子会社となり、コスト競争力を強化。しかし、中国・韓国との価格競争にさらされ、20年3月期連結決算で4期連続の赤字を計上。新型コロナ禍で新造船需要が落ち込む中、競争力を短期的に改善させることは困難と判断し、同日の取締役会で休止を決定した。
 既に受注している5隻の引き渡しが終わる来年1月以降、SSKで新造船はしない。今後、海上自衛隊の艦艇修繕船事業を売り上げの柱に据え、フェリーや一般商船の修繕にも取り組む方針。
 同社の従業員数は現在約740人。子会社2社を含めると計約900人。新造船部門の従業員は、修繕船部門への配置転換や名村造船所への出向、転籍を進める。ただ、全員の配置先確保は困難な状況で、かつ人件費削減により収益性を高める必要もあるため5月6~21日の期間、希望退職者250人を募る。社としても転職を支援する。
 同日、佐世保市内で開かれた記者会見で名村建介社長は「新造船事業の休止はSSKが生き残るための苦渋の決断。取引先をはじめ、地元のみなさまには多大なご心配とご迷惑をおかけする。艦艇修繕を柱に、収益基盤の強化、安定した事業の再構築を加速させる」と述べた。

◆需要低迷 抜本的な再構築へ
 本県第二の都市の経済を長年支えてきたが、全社の3割近くの人員削減に踏み切らざるを得ないほど苦境にある。
 造船業界は2010年ごろから供給過剰が常態化し価格が低迷。中韓メーカーによる安値攻勢が拍車を掛けた。さらに新型コロナウイルス禍で世界的に海上輸送需要が落ち込み、日本の20年受注量は前年に比べ、ほぼ半減した。
 この間、SSKは名村造船所の傘下に入り、老朽設備の更新や伊万里事業所との一体運営など支援を受けてきた。だが主力の中型ばら積み船は中国との競合分野。コスト競争力の改善が見込めず、中核事業の抜本的な再構築を迫られた。配置転換や出向・転籍だけでは足りず、約250人の希望退職を募る。
 今後は修繕事業と舶用機械事業を両輪に収益改善を急ぐ。新造ドックを修繕兼用に改修し、これまで取りこぼしていた修繕ニーズに応えるとともに「将来、伊万里の新造船事業を補完できる機能は残しておく」(名村建介社長)という。とはいえ、自衛隊や海上保安庁の南西警備に対応できる佐世保の「地政学的優位性」(同社長)がSSKのよりどころとなる。

 


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