期待され続けて8年目 鷹・上林誠知を再起に導く“変化”「迷うことがない」

ソフトバンク・上林誠知【写真:福谷佑介】

充実ぶりの伺える宮崎キャンプ「しっかりやりたいことが出来ている」

2年連続のリーグ優勝、5年連続の日本一を目指す王者ソフトバンクで期待の野手の1人といえば、上林誠知外野手を思い起こす人も多いはずだ。2013年のドラフト4位で仙台育英高から入団。2017年に外野のレギュラーの座を掴むと、2018年には全143試合に出場して22本塁打を放ち、野球日本代表「侍ジャパン」の常連にもなった。

だが、2019年以降は故障に悩まされ、出場試合数は年々減少。2019年は99試合、そして昨季はわずか69試合にとどまった。堅守、強肩、俊足、強打と走攻守三拍子が揃った選手ではあるものの、近年はその大きな期待に応えられないシーズンが続いていた。

今年こそは、と思っているファンも多いはず。上林自身もその思いを強く持ち、春のキャンプで汗を流している。「しっかりとやりたいことが出来ている。怪我なくきていますし、順調にきていると思います」。その表情には、ここまでの充実ぶりが滲んでいる。

オフにはレッズの秋山翔吾外野手の自主トレに参加。「日本で1番ヒットを打っている人。そういう人に聞いた方が早いと思った」と志願した。秋山から学んだことは多かった。キャンプでも継続して取り組みを続け「トップを作って投手に向かうときに肩が入る癖があったのを気をつけながら、あとはボールの内側を打つことを意識してやっている」と言う。

「去年は結果が出ても、これでいいのかなという疑問もあった。今はないので、それが違う」

ここまでのキャンプには手応えを感じている。「去年は結果が出ても、これでいいのかなという疑問とかもあった。今はないので、それが違う。やることが決まっているときは迷うことがないので、メンタル面での安定感というのは今の方がある」。第3クールに行われたシート打撃では4打数3安打。結果も出ている。

オフの契約更改では「自分に優しくなりたい」と、自身に厳しすぎるストイックさを反省。また、仙台育英時代の恩師である佐々木順一郎監督(現学法石川監督)から「周りに心配かけちゃいけない。夢の中にいるのに悩むなよ」と指摘されたことを明かし「行動、表情には気をつけたいと思います。いつもならヒットを打っても首を傾げたりがあった。1番悪い凡打はセカンドゴロ。そういう凡打のときはいいけど、それ以外は悲観せずにやっています」と、メンタル面でも変化を感じている。

その能力の高さはもはや疑うところはない。工藤公康監督でさえも「能力からすれば脚もあって、守備もよくて、長打も打てる。それは誰しもが知ってる話。打撃コーチからすれば彼に期待したいところあると思う」と言う。求められるのは結果だけだ。

15日からは紅白戦がスタートし、外野のレギュラーの座を争う熾烈な競争も本格化する。「普段通りに自分のプレーができれば、負けないという気持ちは強い。変に力むことなく、普段通りできたらいいのかな、と。周りのことは全然気にしていないので」。一度はレギュラーを奪いながら、ここ2年間苦しんできた上林。早くも8年目となる2021年、再起と覚醒に期待したい。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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