虎内野陣でグループ開設!川相臨時コーチの「LINE守備講座」

大山(右)を指導する川相臨時コーチ

【赤坂英一 赤ペン!!】阪神・宜野座キャンプの臨時コーチに就任した川相昌弘氏の朝は早い。6時に起床し、8時前には早出練習を行う選手たちと宿舎を出て球場に着いたら9時から約40分間の守備練習。それから全体練習を行い、最後は居残り特守で夕方6時過ぎまで指導だ。

「とにかくずっと動いています。選手はもちろん久慈、藤本守備コーチともいろんな話をしながらやっているので、つい昼ご飯を食べ損ないそうになった日もありました」

しかし、いくら熱心に指導したからといって、急に守備が上達するわけはない。「大事なのは、僕がキャンプ中に選手やコーチに伝えたことを、今後いかに継続し、積み重ねてもらえるか」だと川相氏は強調している。

そこで、川相氏はキャンプ前、まず阪神選手がミスをした場面を集めたビデオを見たいと球団にリクエスト。早速届けられたDVDをチェックすると、昨季リーグ最悪のチーム失策数85個のうち、最も多かったのはイージーミスだった。

「普通にさばけば普通にアウトにできるゴロを、捕り損ねたり、悪送球したりしている。だから、キャンプの最初は基本の見直しからやっていこうと。しっかり足を使ってボールに入っていって、いい姿勢で捕って、しっかり足を使ってスローイングをする。キャンプはそういう基本の見直しをする時期ですからね」

しかし、グラウンドでの練習中に注意や指導を繰り返すだけでは、今後の継続につながらない。そこで川相コーチは自分と内野手のグループLINEをつくった。

「そこに、僕が練習中にスマホで撮った選手たちの動画を流したんです。選手個々の課題と、それに対する僕のコメントも付けて。LINEにそういう証拠を残しておけば、選手も個々の課題を確認できるし、情報や対策を共有することができるわけですよ」

図らずも、これは新型コロナウイルス感染防止対策にもなった。通常、動画は球団スコアラーがカメラで撮影し、宿舎で行われるミーティングの教材にされる。が、現在は新型コロナ禍で密の生じる機会は避けなければならない。その意味で、川相氏の“LINE教室”は格好の代案となった。

グループLINEには内野手全員の動画が収められているから、ほかの選手の動きを見て刺激を受ける選手も出てくるかもしれない。「そういうふうに選手同士で参考にしてもらえれば、さらに効果が上がるでしょう」と川相氏は語っている。

当初、今月18日までの予定だった臨時コーチの期間は22日まで延びた。スマホやLINEを駆使した指導が、シーズンに入って大きな成果に結びつくことを期待したい。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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