もの言えぬ圧迫感、アスリート沈黙 五輪逆風に企業も懸念

国立競技場

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長が18日、五輪相の橋本聖子氏に決まった。森喜朗前会長の女性蔑視発言が多くの議論を呼んだ一方で、一連の騒動に声を上げて反応したアスリートは少ない。長引くコロナ禍と今回の混乱で大会へ向けられる世間の厳しい目も背景にありそうだ。

 昨年3月に大会延期が決まった際は、選手自ら会員制交流サイト(SNS)などで意見を述べたり、所属先を通じてコメントを出したりした。だが、今回は一部を除いてほぼ見られなかった。

 女性差別問題と後任人事に焦点が当たった今回の騒動。複数の五輪内定者が在籍する大手企業の広報担当者は「選手も胸の中で思うところはあるはず」とした上で「繊細な問題で、いまは発言そのものがいろいろな捉え方をされてしまう恐れがある」と選手に発信を控えるよう促した。

 コロナ禍で開催さえ不透明な中、組織委の姿勢が世界的な批判を浴び大会イメージも損なった。国内外からの風当たりは強まり、この担当者は「飛び火するように選手への見方が厳しくなってきている」と指摘する。

 実際、同社所属の選手が取材に応じた発言に関し、ネット上で心ない中傷もあったという。「言葉だけが独り歩きし、本人が傷ついている」

 開幕まで約5カ月に迫ったが、機運は高まるどころか選手も口を閉ざさざるを得ない圧迫感が強まる。同担当者は「応援してもらってこそのオリンピック。何とか無事に開催されることを祈るしかない」と話している。

© 株式会社神奈川新聞社