阪神ドラ1・佐藤輝は守備に課題 基本練習の積み重ねが必要…川相臨時コーチが指摘

佐藤輝(左)を指導する川相臨時コーチ

【赤坂英一 赤ペン!!】「3週間と短い期間ではありますが、選手たちの守備に対する意識は確実に変わってきたと思う。キャンプ最初のころから比べると、明らかによくなった選手もいますよ」

巨人OBでありながら阪神・宜野座キャンプで臨時コーチを務めた川相昌弘氏(56)が、こう手応えのほどを明かした。ゴールデン・グラブ賞6回、犠打世界記録533個を誇る川相氏の目に、ライバル球団の若トラたちはどのように映っていたのか。

まず気になるのは、今キャンプの主役と言っていいドラフト1位新人・佐藤輝明内野手の評価。実戦5試合目だった16日の練習試合(楽天戦)で、初めて大学時代の定位置・三塁に入るも、二塁封殺を狙える唯一の守備機会で送球の判断を誤り、野選が記録された。だからかどうか、翌17日の特守では5―4―3の併殺の反復練習が課されている。このとき、つきっきりで指導に当たった川相コーチは言った。

「佐藤くんは意外に器用なので、器用さが必要なプレーは大体できると自分でも思っているんでしょう。実際、スローイングはしっかりしているし、適当に投げてもそこそこ投げれるんですよ」

そう前置きした上で「しかし」とこう続けたのである。

「しかし、それだけではプロでは通用しません。もう少し早く打球に向かって移動したり、もっと顔の前でボールを捕るという丁寧さを、これから身につける必要がある。送球に関しては、遠回しにボールを投げるので、捕ったところから、早く投げたほうがいい。腕が遠回りすると送球もシュート回転しますから」

要約すると、三塁手の素質はあるが、これからプロでやっていくには、なお基本的な練習の積み重ねが必要ということ。

「足の動きについても、先輩の選手に比べたら、正直言って、まだ動いてないよ、と本人にも言いました。だからきっちり足を使って捕れるようになったら、投げる能力はそこそこあるから、三塁手として伸びていく可能性はあると思うよ、と」

一方、「キャンプ最初のころから比べると確実に変わってきた」と川相コーチが評価しているのが、3年目の小幡竜平内野手である。2018年秋のドラフト2位で入団し、昨年一軍昇格を果たしたばかりの弱冠20歳の若トラだ。

「これから大きく伸びる可能性を秘めています。昨年は内野で結構エラーも(二塁と遊撃で9個)していますが、このキャンプでかなり守備の形、取り組む姿勢が変わってきました。上には北條や糸原がいるし、すぐに定位置を奪うのは難しいでしょう。でも、レギュラーを刺激するだけの存在になれる。小幡のような選手が、内野手全体の底上げにつながる可能性もあると期待しています」

それには「一にも二にも今後の継続と積み重ねが大事」と川相コーチは強調している。果たして本番で活躍できる若トラが何人出てくるか、いまから楽しみでならない。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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