池江璃花子「復活V」が日本競泳界に及ぼす〝化学反応〟

復帰後初優勝を飾った池江璃花子(代表撮影)

ついに〝女王奪還〟だ。競泳の東京都オープン最終日(21日、東京辰巳国際水泳場)、白血病からの完全復活を目指す池江璃花子(20=ルネサンス)が、女子50メートルバタフライ決勝で25秒77をマークして復帰後初優勝を飾った。いよいよ次は東京五輪代表選考会を兼ねた日本選手権(4月、東京アクアティクスセンター)がターゲット。大舞台に向けて注目が集まる中、元五輪金メダリストは池江が日本の競泳界全体に及ぼす〝化学反応〟を指摘した。

圧巻の泳ぎだった。池江は前半からトップに立つと、一気に差を開げてリードを保ったままフィニッシュ。予選でマークした26秒38を大幅に上回り「どんな試合でも1位はうれしい。(復帰後は)予選で1番というレースはあったけど、決勝で1位、タイムもついてきたことは今後の自信につながった」と素直に喜んだ。

昨年8月の東京都特別大会から一貫して自由形に出場してきたが、5戦目となる今大会でついに得意種目のバタフライを解禁。20日の100メートルは目標タイムに届かず3位に終わったものの、この日は違った。「今年中に50メートル種目で王座を奪還することを目標にしていた。まずは50メートルバタフライで王座奪還できたことは一つクリアかな」。また、レース後は五輪3大会メダリストの松田丈志氏(36)に声を掛けられ「世界水泳で決勝に残れるレベルのタイムで泳いでいたと。全く実感はないけど、徐々に戻ってきているのかなと思う」と自己評価した。

白血病の公表から2年。闘病生活を乗り越えて好タイムを連発する池江の姿は周囲に驚きを与えている。アテネ五輪女子800メートル自由形金メダリストの柴田亜衣氏(38)は「昨年、練習を再開してあそこまで泳げるなんて、現役だったら嫉妬しちゃうくらいの才能です(笑い)。でも、やっぱり本人がつらい中で頑張っての記録。本当にすごいなと思います」と称賛する。

柴田氏が注目したのは今月のジャパン・オープン(OP)50メートル自由形決勝。池江は24秒91で惜しくも優勝を逃して2位だったが、上位3人が24秒台というハイレベルなレースとなった。

「水泳は個人種目なんですけど、池江さんが復帰してから他の選手もまた気持ちが引き締まって記録が伸びているのかなと。そういうのはちょっと感じているところもあって、多分(ジャパンOPの)レースを見てみんな刺激されていると思う」

つまり、池江の復帰で国内女子のトップ選手が奮起し、相乗効果となって全体のレベルが上がる――。池江を起点とした〝化学反応〟が起きているとみている。その上で柴田氏は「やっぱりアッと思わせてくれる何かを持っている選手だと思うので、そこは必ずプラスになってくれるんじゃないのかなと」と期待を寄せた。

池江は50メートル、100メートル自由形と50メートル、100メートルバタフライで日本選手権の参加標準記録を突破している。出場種目は西崎勇コーチと話し合って決めることになるが「(同選手権は)出る方向で決まっている。出るからにはいい位置を狙いたいと思っているので、目標を持って決めていきたい」と意欲満々だ。

あくまでも最大の目標は2024年パリ五輪。しかし、東京五輪出場の可能性もゼロではない。池江は「まだ(東京五輪が)あるかないかは決まってないけど、アスリートとして狙っているところはみんな一緒だと思うので、それに向けて全力で頑張る」と率直な思いを口にする。大舞台への道が徐々に見えてきた。

© 株式会社東京スポーツ新聞社