子育ての『隙間』を埋める 子ども一時預かり、送迎…20年余 幅広い世代活躍

預かった赤ちゃんを寝かしつける大賀さん=佐世保市、ファミリーサポートセンター佐世保

 長崎県佐世保市がNPO法人に委託して運営する「ファミリーサポートセンター佐世保」は開設から20年が過ぎた。現在、県内12市町が子どもを預かる事業を実施しているが、最初に始めたのが佐世保市。共働き家庭の増加に伴い利用件数が年々増える中、ベテランから現役の子育て世代までセンターの提供会員(スタッフ)らは精力的に活動に取り組んでいる。

 17日午前。花園町のセンターで、提供会員の大賀幸子さん(64)が預かった生後4カ月の赤ちゃんを寝かしつけていた。「昨晩は寝なくて大変だったとママから聞いたけれど、本当にお利口さん」。安心しきった寝顔に目を細めた。
 センターは2000年に開設。NPO法人ちいきのなかま(守永惠理事長)が市の委託を受けて運営している。買い物や求職活動などさまざまな事情で子どもを預けなければならない人に対応。センターや利用者の自宅で預かったり送迎したりする。料金は1時間700円から。
 大賀さんは設立当初から活動する“古株”の1人。自身は自宅で和裁の仕事をしながら、3人の子どもを育てた。活動を始めた最初のうちは、誰かの子どもを預かる責任の重みを感じ、わが子を「置いていく」母親に共感できないこともあった。
 だが、たとえ一時でも子育ての緊張から解放され、晴れやかな表情で戻ってくる母親と、うれしそうに出迎える子どもの笑顔を見るとすぐに見方は変わった。「お母さんがより良い1日を送れるように手を尽くすことがやりがい」。今ではそう思う。
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 働く母親の増加や働き方の変化を背景に、センターの利用件数は数年前から増加傾向にある。本年度は1月までで計1752件。2018年度の総数を既に上回っている。一方、提供会員の登録者数は252人。このうち活動実績がある人は絞られ、「会員の負担は増えている」と守永理事長は明かす。
 提供会員の確保は課題だが、中には30、40代の現役子育て世代もいる。中学生と小学生の子どもを持つ向坂望さん(41)は自身も利用者の1人だった。若い親の気持ちに寄り添い、センターに恩返しをしたいと活動に加わった。
 他の家庭の育児を支えることに対し「まだ自分が子育て中なのに」と驚かれることもある。ただ、活動を通じてわが子の良い部分を再認識したり、活動する母親たちとのつながりができたりするなど得るものも多い。「自分の子育てにこそ生かせる」と向坂さん。
 守永理事長は「ファミリーサポートセンターは市民が善意で子育ての『隙間』を埋める事業。その隙間が増えている」と話し、子育て家庭を支える身近な存在の欠如を強調する。「提供会員は使命感と責任感を持って取り組んでいる。その思いや考えを受け止め、支えたい」。
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 センターは24~26日の午前10時~午後4時、花園町のボランティアセンター別館などで会員養成講座を開く。問い合わせはセンター(電0956.42.1848)。

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