広報官隠し?

 広報室は「窓」だと言ったのはあなただ、窓なしのブラックボックスでいいのか、と詰め寄る記者にD県警広報官の三上が反論する。〈窓はある。そっちが考えているほど大きくないだけのことだ〉-映像化された作品でご記憶の方もおられるだろう。横山秀夫さんの小説「64(ロクヨン)」の1シーン▲昨日夕、緊急事態宣言の一部解除に合わせて「ぶら下がり取材」に臨んだ菅義偉首相をテレビで見ながら、ずいぶん前に読んだ小説のことをあまり脈絡なく思い出した▲正式な首相の記者会見が開かれなかった理由は「宣言が全面解除に至らなかったから」と説明されている。しかし、内閣広報官が総務省の幹部時代に受けた「お一人様7万円超」の高額接待問題が影響していそうなのは明らかだ▲まだまだ油断は禁物だが、感染状況や医療態勢の改善が進んだ、と判断された6府県の宣言解除は“半歩前進”の喜ばしい節目には違いない。関係地域へのねぎらいの一言ぐらいあっていい▲首相の発言が求められる場面だ。ぶら下がりも囲み取材も要は「立ち話」でしかない。それでなくても、言葉の弱さが繰り返し指摘されてきた首相である▲「窓」を大きく開くべき局面は今後もやってくる。立て付けが怪しくなっているのなら、早めに取り換えた方がいい。(智)


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