第五福竜丸事件67年

 最新の技術で色鮮やかな映像によみがえった「ウルトラセブン」がここ何カ月か衛星放送で流され、特撮のすごさに毎回、圧倒されている。これに限らず、古くから日本の特撮は驚異的なレベルだろう▲怪獣映画の元祖「ゴジラ」は遠い昔の作品だというのに、その迫力といったら、今のCG映画にもまるで劣らない。東京の街をめちゃくちゃにする大怪獣の特撮と、その下で逃げ惑う人々の実写が画面ですっと溶け合う▲たまにDVDで見たくなるこの大作が劇場公開されたのは1954年11月。マグロ漁船「第五福竜丸」の被ばくから、たった8カ月後だった▲度重なる水爆実験で、深い海の底にいた太古の巨大怪獣が目を覚まし、制御不能のまま地上で暴れまくる-。映画の設定は、米国の水爆実験で死の灰を浴びた第五福竜丸事件の恐怖をそのまま映す▲作品が緊迫感にあふれるのは、高い技術力だけでなく、時代の危機感を伴うからだろう。原爆投下から9年後、再び被ばく者を生んだ事件は、きょう3月1日に起きた▲かつて東京で元乗組員の証言を聞いたことがある。仲間をがんなどで失う中で「生かされている」と思い、語る活動を続けてきたという。核被害の体験と、その後の歩み。長崎、広島、福竜丸の体験と思いとが、きょうはつながる日でもある。(徹)

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