リニューアル前にフラット35を契約。団信付きに借り換えるべき?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、41歳、パート・アルバイトの女性。長期固定金利住宅ローン「フラット35」が団体信用生命保険付きになる前に契約した相談者。現在、団信付きのローンに借り換えを検討しているといいます。借り換えのメリットはあるのでしょうか? FPの渡邊裕介氏がお答えします。

35年の住宅ローンを組んでいます。それと同時に死亡保証のみの団体信用生命保険にも加入しました。「フラット35」ですが、まだ団信を金利に含めたものがリリースされる前でした。

最近、ローン会社から団信を金利に含めた借り換えの提案をされました。3大疾病や8大疾病つきのものに変えたいと思っていたので、借り換えを検討しましたが、諸費用で130万かかってしまうとのこと。

手元に貯蓄もなく、この諸費用分をさらにローンに組み込んだものも提案されました。別で団信に加入するよりも、金利をプラスされても、3大疾病保障や8大疾病保障がついているとなると、とても魅力的なのですが、130万の諸費用を払ってまでも借り換えるべきか悩んでいます。

ご相談させていただきたく、宜しくお願いします。

【相談者プロフィール】

・女性、41歳、パート・アルバイト、既婚

・夫(48歳、会社員)、子ども(9歳、6歳)

・住居の形態:持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:37万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円

・毎月の世帯の支出の目安:37万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:15万5,000円

・食費:6万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:3万5,000円

・保険料:3万円

・通信費:2万円

・車両費:1万円

・お小遣い:1万円

・その他:3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円

・現在の貯蓄総額:0円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:5,000万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。

住宅ローンの借り換えのご相談です。コロナ禍の中、収入に変化がある方も多く、家計見直しの一環として、住宅ローン借り換えのご相談も増えています。今回は団体信用生命保険(以下「団信」という)の保障内容の変化や借り換えに関する手数料を考慮した上で、借り換えした方が良いか判断したいとのことです。

住宅ローンに付帯される団信の特徴を見ながら、借り換えメリットについて考えていきましょう。

団信付きも選べるようになった「フラット35」

団信とは、住宅ローンの返済中に万が一のことがあった場合に、保険会社が保険金によって残りの住宅ローンを完済する仕組みです。基本的に、住宅ローンを組む場合は団信加入が必須となります。その為、住宅ローンを組む為には団信に加入する必要があり、その保険料は毎月の住宅ローンに含まれる形式となっています。

ただ、「フラット35」を利用する場合は、団信加入が任意となっており、以前までは、住宅ローンとは別に団信の保険料を負担するかたちとなっていました。それが、平成29年10月以降、フラット35においても団信が組み込まれた住宅ローンにリニューアルし、現在は団信付きの住宅ローンと団信を外しての住宅ローンとを選択できるようになっています。

おそらく、ご相談者は平成29年10月以前に住宅ローンを組んでおり、外枠での支払いだったものを、住宅ローンに組み込む形の住宅ローンへの借り換えを提案されていると思われます。

3大疾病保障付と比較

では、ご相談者の場合、借り換えについてはどのように考えれば良いでしょうか。

いただいた情報では、残りの期間や金利、団信の保険料等が不明な為、残債や現在の住居費から概算で下記条件で考えてみましょう。

【現状の住宅ローン】 ※住居費と若干の相違があります
残債:5,000万円
残り期間:31年
金利:1.1%
月々:15万8,686円
団信保険料総額(概算):290万
返済総額:住宅ローン5,903万円+団信290万円=6,193万円

まずは、フラット35での借り換えをみてみましょう。現在のフラット35での団信付き借り換え金利1.35%とします。3大疾病保障を付加する場合は、+0.24%上乗せとなりますので、適用金利が1.59%となります。残債に諸費用を組み込んで借り換えした場合で算出すると下記となります。

【借り換え後住宅ローン(1)】フラット35・3大疾病保障付き
借入額:5,000万+諸費用130万=5130万
借入期間:31年
金利:1.59%
月々:17万4,759円(団信込み)
返済総額:6,501万

現状のローンと比較すると、返済総額で308万円程の増額となります。残りの期間が31年だとすると、年間約10万円の保険料でローンの残債に対して3大疾病の保障が付加されることになります。

8大疾病保障付きと比較

次に、8大疾病保障付きの場合を考えてみましょう。8大疾病保障を付加する場合は、フラット35以外になります。条件は変わりますが、変動金利で借り換えた場合の効果をみてみましょう。変動金利が0.45%、8大疾病付加で+0.3%上乗せで適用金利0.75%仮定します。

【借り換え後住宅ローン(2)】金融機関・8大疾病保障付き ※変動金利・金利変動なし
借入額:5,000万+諸費用130万=5,130万
借入期間:31年
金利:0.75%
月々:15万4,598円(団信込み)
返済総額:5,751万

現状のローンと比較すると、将来の金利変動が無い場合は、総額で約440万円の減額となります。当然、将来の金利上昇リスクがあるので、確実に減額に繋がるわけではありませんが、月々の返済を抑えて保障を充実することが可能になります。

また、保障が付加されることで、現在加入されている生命保険や医療保険の見直しが可能になり、保険料コストダウンも期待できる場合もあります。最近は、ネット銀行を中心に、金利上乗せ無しで、がんと診断されたら50%残債を保障されるなど、各金融機関の団信のバリエーションも増えています。

保険の見直しも合わせて総合的なコストダウンも可能

ご相談者の現状の家計を確認すると、手元貯蓄が無く、また月々の貯蓄ができていない状況ですので、保障が付加されるメリットはありますが、月々やトータルの支払いが増える借り換えについてはオススメできません。

固定金利と変動金利の違いは理解する必要がありますが、当初の返済額を抑えることができる変動金利への借り換えを検討されても良いかもしれません。団信の保障の充実により、保険の見直し・保険料コストダウンも同時に実現できれば、教育費準備や将来の繰上げ返済資金として活用することもできます。

ご相談者のように、住宅ローンの借り換えを検討される方のご相談が増えてきています。団信も以前と比べると保障内容が充実してきており、各金融機関で様々な特徴があります。専門家に相談すると、具体的な借り換え効果やその方にマッチした金融機関の選別など、サポートしてもらえます。ぜひ諸費用を考慮した上で、トータル的にメリットの出る借り換えを目指してください。

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