怪物・佐藤輝が止まらない まだ封印中の能力アリの末恐ろしさ

新怪物はまだベールを脱いでいない

また逆方向への驚弾――。阪神のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明内野手(22=近大)の勢いが、とどまるところを知らない。

「6番・右翼」で先発した14日の巨人とのオープン戦(甲子園)でも左翼ポール際へとたたき込み、オープン戦トップの4本塁打。怪物ぶりをいかんなく発揮している。だが、そんな暴れっぷりもまだまだ序の口。現在は封印中の〝あの能力〟が解放されれば、さらなる怪物級のプレーを見せてくれそうだ。

両軍無得点の4回二死、巨人左腕・高橋優貴(24)の143キロ直球をとらえると、飛距離は十分の大飛球で左翼ポール際へ。一度は「ファウル」判定も、矢野監督の「リクエスト」でリプレー検証の結果、本塁打に。本人も「走りながら『入ったな』と思ったんだすけど…フェアで良かったです」とニンマリだったが、甲子園球場は判定が覆った瞬間、興奮のるつぼと化した。

これでオープン戦トップの4本塁打。プロでも球界トップクラスの長打力を実証中なのに加え、まだ〝封印中〟の能力もある。それは50メートル6秒ジャストで走る脚力だ。

打者・佐藤輝を「3割・30本塁打・30盗塁」を2度記録している「ソフトバンク・柳田タイプ」と形容する評論家は多い。矢野監督も佐藤輝の「飛ばすこと以外の魅力」に太鼓判を押すひとり。昨年の新入団発表では、怪物新人をNPBではまだ誰も成し遂げてない「フォーティ・フォーティ(40本塁打・40盗塁)を将来は何度も狙える選手」と評したほど。

メジャーでもソリアーノら過去4人しかいない金字塔にトライできる可能性を持った、類まれな身体能力の持ち主でもあるのだ。

だが、ここまでのオープン戦では、佐藤輝の盗塁はいまだゼロ。もうひとつの〝武器〟はいまだベールに包まれたままだ。本塁打とは違い、盗塁は企図自体が試合の状況設定が絡むため、やみくもに走れるものではないが、もちろん本人に意欲がないわけではない。むしろ使う側が〝セーブ〟している意味合いが強い。

ルーキーにもかかわらず、オープン戦から右翼に左翼、さらには三塁と複数ポジションをこなし、打撃では「これだけ打って、使われなかったらおかしい」と矢野監督も開幕スタメンのお墨付きを与えるほど。

連日の大活躍で在阪にとどまらず、今や虎の新人は、一挙手一投足において全国メディアの注目度もうなぎ上りだ。一方で首脳陣からすれば怖いのは、ケガや故障などのアクシデント。本人の〝負担〟も少なからず考慮に入れている。

10日の広島戦では、ライン際の飛球を相手の三塁手が捕球できず、結果的に「安打」になったが〝万が一〟を想定して全力でのベースランニングをしていれば「二塁打」にもなった当たりでもあった。事情に詳しい関係者も「大卒とはいえこれだけ打って、ポジションも内外野で複数やって、それだけでも大したもの。今は本人もそれで目一杯なのは、こちらにも伝わっている。走塁まで細かいことを言うのは…」と、走攻守のうち「走」の部分の助言や指示は必要最小限にとどめている。

〝段階的〟にパフォーマンスのギアを上げていく算段は、使う側の理想でもある模様。もちろん、そんな配慮は、攻守で本人がプロの水に慣れてくればくるほど、必要なくなる部分でもある。

大学では通算7盗塁と目立った記録を収めてはないもののスカウトの間では「脚」もプロで通用する要素に挙がることが多かった佐藤輝。球界に「飛ばし屋」として旋風を巻き起こした後は「走り屋」としても名を打っていくことになりそうだ。

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