検査費補助は「死活問題」 新上五島町有船 九州商船の請求棄却

 新上五島町が、長崎-上五島航路を運航する2社のうち五島産業汽船にのみ補助金を支出したのは違法だとして、競合する九州商船などが同町に補助金の返還や約1億850万円の賠償を求めた訴訟で、長崎地裁(古川大吾裁判長)は16日、九州商船側の請求を棄却する判決を言い渡した。
 訴状などによると、五島産業汽船は同町の町有船「びっぐあーす」を運航。同社は船の検査費を支払えず、町が検査費約1億7千万円を負担した。九州商船側は検査費の支出が実質的な補助金に当たり、「競合関係にある2社のうち1社にのみ補助金を交付するのは不平等で公益性を欠く」と訴えていた。町側は支出は補助金に当たらず公益性があると反論していた。
 判決によると、町が検査費のために負担した支出は「五島産業汽船に対する補助金」と認定。その上で「町民の生活や経済活動にとって必要不可欠な就航であり、民間企業の単なる一事業の停止にとどまらない町にとっての死活問題だった」と指摘した。町は定期検査を受けさせ就航を続けさせる必要性があり「町長の権限の行使に裁量権の逸脱や濫用(らんよう)があったとはいえない」とした。
 判決を受け、九州商船の担当幹部は「請求棄却は残念。判決内容を確認する」と話した。同町の石田信明町長は「島民にとって航路の維持は死活問題。町の主張を認めてもらえたと受け止めている」とコメントした。
 町などによると、2018年10月に五島産業汽船の同名旧会社が破綻。その後新設された新会社は検査費の捻出が困難だった。

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