東京五輪で“第2の森騒動”勃発 開閉会式演出トップの「経歴」と「言動」

クリエーティブディレクターの佐々木宏氏

“第2の森騒動”が勃発した。「文春オンライン」は17日、東京五輪・パラリンピックで開閉会式の演出全体を統括するクリエーティブディレクターの佐々木宏氏(66)がタレントの渡辺直美(33)の容姿を侮辱する演出を提案していたと報じた。この報道を受け、佐々木氏は謝罪文を発表。大会組織委員会の橋本聖子会長(56)に電話で辞任する意向を伝えたという。東京五輪をめぐっては、森喜朗前会長(83)が女性蔑視発言で辞任したばかり。世間の五輪への反発は強まる一方だ。

「文春オンライン」によると、佐々木氏は渡辺が動物のブタに扮する演出を企画。演出チーム内のLINEで提案したところ、他のメンバーからは反対の声が上がったという。記事の中では佐々木氏が投稿した「ブヒー ブヒー」「オリンピッグ=渡辺直美さん」などの文面も明かされている。報道を受けて、組織委の橋本会長と国際オリンピック委員会(IOC)の幹部が緊急会談を行うなど騒動が拡大。佐々木氏は18日未明に謝罪文を発表し、橋本会長に電話で辞任する意向を伝えたことを明かした。

今回の火種となった佐々木氏とは、いかなる人物なのか。過去の言動などからは、今回の騒動の“背景”も垣間見える。元電通の佐々木氏は、過去にソフトバンクの「白戸家」シリーズや缶コーヒーBOSSの「宇宙人ジョーンズ」シリーズなど数々のテレビCMの演出を手掛けてきた。広告業界で知らない人はおらず、世に出した作品やキャッチコピーは枚挙にいとまがない。

2001年の米国同時多発テロの直後に航空会社の新聞広告で「ニューヨークへ、行こう。」、11年の東日本大震災の際は飲料メーカーのCMで著名人が坂本九の「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」を歌いつなぐ企画を手掛けた。佐々木氏は「こういうこと(緊急事態)が起こると、自分の中のスイッチが入る」と語っている。非常時になると直感的にキャッチコピーが思い浮かぶようだが、新型コロナウイルス禍の中で迎える五輪のひらめきは「オリンピッグ」だったということなのか…。

近年では、2016年リオ五輪の閉会式では人気ゲームのキャラクター「マリオ」に扮した安倍晋三前首相(66)が土管から登場した演出は有名だ。昨年7月23日には国立競競技場で開催された東京五輪開催1年前のセレモニーの演出を担当。競泳女子の池江璃花子(20=ルネサンス)を起用して話題となった。

佐々木氏は池江が身に着けた白い衣装を選んだ理由について「スポーツ選手らしい服装が基本と考えましたが」と前置きした上で「ご本人がすごくスタイルもよろしくて、カッコが良いので割とプレーン(簡素)な衣装にした」と話した。女性に対して「スタイルがいい」と直接的な表現を使うあたり、今回の一件とリンクしているようにも見える。

いずれにせよ、組織委にとっては森前会長に続いて女性に対する“侮辱行為”が発覚した格好。ネット上では佐々木氏への批判のみならず「五輪を中止にしろ!」などと開催そのものへの反対意見が相次いでいる。森騒動と同様に世界各国からも反発の声が上がることも避けられそうにない。

組織委内では次から次に出てくる“身内”の不祥事に、ウンザリした表情で「もう勘弁してほしい」と本音を漏らす関係者もいる。これでは、五輪開催の気運は高まるどころかしぼむ一方だ。

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