東日本大震災から10年 新たな課題も…求められる支援の変化(後編)

3月11日で東日本大震災の発生から10年となりました。各地で追悼の祈りがささげられ、震災についてそれぞれが思いを巡らせました。未曽有の大災害から10年がたちましたが、課題は山積しています。10年の歳月でが見えてきた被災地の新たな課題を探ります。

支援団体はどんな活動をしてきたのでしょうか。共同通信の調査によると、回答した支援団体のうち「コミュニティー形成・再生支援」と「被災者の心のケア」を挙げた団体がそれぞれ46%、「原発事故の県外被災者支援」が37%、「生活再建・見守り活動」が34%と続きました。今回取材した「NPO法人みんぷく」も、原発事故で福島県双葉郡からいわき市に避難してきた人たちを支援してきました。「知らない土地で新たな生活を始める際に必要なスーパーマーケットや病院といったインフラがどこにあるのか」など、当初は被災者のために地図を作るなどの対応に追われました。原発周辺地域から見知らぬ土地に突然避難することとなった人たちに寄り添いながらこの10年、支援活動を続けてきました。

大震災から10年というタイミングで行われた共同通信による調査で「2021年の3月までに支援活動を終了、または縮小する」と答えた団体が合わせて4割近くに上り、被災者支援が縮小している現状が明らかになりました。その理由として、調査に回答した団体は「ある程度役割を果たした」「世間の関心が新しい災害に向かっている「一緒に支援活動をしてきた企業が縮小した」ことを挙げました。また、この1年間猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響で「資金の調達が難しくなっている」状況もあるようです。震災発生から10年がたち、支援活動の継続が難しくなってきています。

一方、みんぷくの高梨さんは「支援に求められているものの変化」を指摘します。高梨さんは「10年たって、普段の生活に戻りつつある。緊急時と違い、求められているものと状況が変わりつつあるのではないか」とした上で「地域課題に支援の方向が変わりつつある」「高齢化問題が復興公営住宅(被災者の避難先)でも起こりつつある」と指摘しています。

また、別の支援活動を行う「NPO法人ザ・ピープル」の吉田恵美子代表は「東京電力から賠償金をもらい、金銭感覚が変わってしまい生活困窮者に陥った人や、被災で仕事を失って生活再建のめどが立たず貧困に陥っている人がいる」と話します。こうした現状を知った吉田さんの団体では、3年前から余った備蓄品を集めて行政を通して食べ物を届ける「フードバンク事業」を始めました。

原発の廃炉や帰宅困難のニュースが注目されがちですが、震災から10年がたって少しずつ落ち着いてきたところで、高齢化や貧困といった問題も表面化してきています。

しかし、調査によりますと、回答があった団体に「今後の活動方針について」尋ねたところ「活動は必要」「どちらかというと必要」と答えた団体が合わせて92%にも上りました。震災発生から10年がたち、改めて「支援の形」や「支援の方向」の見直しが必要となってきているようです。

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