反省か、計算か。公職選挙法違反の罪に問われている元法務大臣の河井克行被告(58)が23日に始まった被告人質問で、これまでの無罪主張を一転させて起訴内容の大半を認め、さらには議員辞職まで表明したことに驚きの声が上がっている。一体、何が目的なのか。
河井被告は妻の案里元参院議員(47)が出馬した2019年の参院選をめぐって、広島の地元議員ら100人に現金約2900万円を配ったとされる。「妻の当選を得たいという気持ちがまったくなかったとは言えない」と話す一方で、案里氏との共謀については「まったく事実と異なる」と否定した。さらに、法廷で「衆議院議員を辞することにしました」と述べた。
これまでの河井被告は無罪主張を続け、裁判中も証人に向かって怒鳴りつける場面があるなど必死さを見せていた。また、保釈時にも議員バッジを着けるなど、政治家を続けることに並々ならぬ意欲を見せていたはずだった。それだけに今回の方針転換は驚かれているわけだ。
河井被告は法廷で、親交のある神父から「自分の内面と誠実に向き合ってください」と諭されたことで全面無罪の主張を取り下げることにしたと話していた。
本当にそうなのか?
立憲民主党の福山哲郎幹事長はこの日の会見で「議員辞職があまりにも遅すぎた。その上、歳費をもらい続けた。コロナ禍の状況で国民が苦しむ中、理解に苦しむ行動。説明責任は果たしていないし、自民党には猛省を促したい」と激怒した。
実際、河井被告には、東京地検特捜部に逮捕された昨年6月以降、給料に当たる歳費やボーナスに当たる期末手当など計約2600万円が支給されたとみられる。国民にとっては腹立たしいことだ。
しかし、カネだけの問題ではなさそうだ。
元衆院議員で弁護士の横粂勝仁氏(39)は自身のユーチューブチャンネルで「これだけの買収の規模だと実刑もあるんじゃないかと法律家の中でも言われている」と実刑の可能性を示唆した上で、「このまま無罪主張を貫くと実刑になりかねない。ここで議員辞職、そして無罪主張をやめて真摯な反省と謝罪で執行猶予を狙う戦略なのかな」と分析していた。
さらに永田町では補欠選挙との関連を疑う声がある。
「3月15日までに辞職していたら4月25日に補欠選挙になっていました。16日以降だと次期衆院選と同じタイミングになります。4月25日の補欠選挙は北海道など3か所でありますが、自民党も公明党も劣勢だから選挙を増やしたくなかったはず。3月15日をすぎるまで河井氏は待っていたんじゃないか」(永田町関係者)
すでに離党している河井被告が自民党へのせめてもの罪滅ぼしとして、このタイミングで辞職したということなのか。
自民党の二階俊博幹事長はこの日、河井被告について「党としても他山の石としてしっかり対応していかなくてはならない」と人ごとのように語っていたが、他山の石なんかじゃなさそうだ。