「つみたてNISAの基本」 運用商品はどう選べばいいの?投資信託の決め方

つみたてNISAの口座を開いたのは良いのですが、そこから先、恐らく皆さんが迷われるのは「どの投資信託で積み立てればいいの?」ということだと思います。つみたてNISAで投資できる投資信託はたくさんありますが、毎月積み立てられる金額には上限があります。今回は、初めてつみたてNISAで資産形成をする人が、どういう観点で投資信託を選べばよいのかについて解説してみました。

前回記事:「つみたてNISA」って何?基本の仕組みを解説「老後はつみたてNISAだけですべてが解決するわけではありません」


運用商品は193本もある!

つみたてNISAは一般NISAと違って、株式やJ-REITの個別銘柄は対象外です。では、何を積み立てるのかというと、現状では投資信託とETFのみです。

それも、国内で設定・運用されているすべての投資信託とETFが対象ではありません。2021年2月末現在、国内で設定・運用されている投資信託の本数は、追加型株式投資信託が5793本、ETFが197本で、両者を合わせると5990本もあるのですが、このうちつみたてNISAの対象となっている投資信託とETFは合わせて193本です。

つみたてNISAの対象となる投資信託とETFは、それを運用している投資信託会社が金融庁に「このファンドをつみたてNISAで買い付けられるようにしてください」と申請し、金融庁からのお墨付きが与えられたところで初めて可能になります。現在の193本は、そうやって金融庁からの認可が下りた投資信託とETFということになります。

「たったの193本しかないの?」って思いましたか?

でも現実問題、この193本の中から自分が積み立てたい投資信託やETFを選ぶだけでも、かなり迷うと思います。

嘘だと思うなら一度、金融庁のホームページを見てみて下さい。こちらに、つみたてNISAで投資できる投資信託とETFの一覧が掲載されています。

つみたてNISAの対象商品 : 金融庁 (fsa.go.jp)

どうでしょうか?

仮に毎月の積立金額を3万円とすると、あまりたくさんの銘柄に分散させることは出来ませんし、資産クラス別に複数の投資信託に分散させるくらいなら、最初から複数の資産クラスに分散投資しているバランス型ファンド1本で積立を続けた方が、シンプルで管理もしやすくなります。

もっと大きな金額で積み立てられるのであれば、それが正しいかどうかは別にして、複数ファンドに分散して買い付けていくことも出来ますが、月々3万円までしか積み立てられないのだとしたら、この193本の中から積み立てていくファンドを1、2本まで絞り込んでいく必要があります。

投資対象候補は8分の1まで減らすことができる

では、どういう観点から積み立てるファンドを絞り込んでいけばよいのでしょうか。

もしあなたが投資未経験者で、つみたてNISAを用いて初めて投資、資産形成にチャレンジするのであれば、選び方は簡単です。一番、オーソドックスなファンドを選んでください。具体的には世界中の株式市場に分散投資したのと同じ投資効果が期待できるファンドです。

逆に初心者は買わなくても良いファンドもたくさんあります。たとえば、

① 特定の国や地域に投資するファンド。この手のファンドは初心者が1本のファンドで積立投資をする場合には不向きです。分散が効いていないので集中投資リスクを高めます。後述しますが、この手のファンドは複数のリスク資産のポートフォリオを持っている人向けです。

② ターゲットイヤー型ファンド。運用期間が経過すると自動的にリスク資産への投資比率を下げてくれるので、一見すると便利なように見えるのですが、投資比率を下げたタイミングでマーケットが堅調に推移した場合、そのリターンを取り損ねる恐れがありますし、この手の資産配分比率の調整くらいは自分で判断するようにしましょう。

③ 複数の資産クラスに分散投資したファンド。一見するとリスク分散という観点で正しい選択のようにも見えるのですが、よく考えてみて下さい。皆さんはすでに複数の資産を持っているのではありませんか。価格変動リスクは預貯金の比率を上げれば軽減できますし、持ち家に住んでいる人はすでに不動産のアセットを持っているので、REITに投資する必要は原則としてありません。

④ 債券型ファンド。ポートフォリオに債券を組み入れるのは、基本的にはポートフォリオの価格変動リスクを軽減するためです。これは現預金を一定額保有することで代替できます。

ちなみにつみたてNISAで投資できる投資信託は、インデックス型とアクティブ型があります。インデックス型とは市場の平均値に近い成績を目指してポートフォリオを構築するファンドで、アクティブ型は市場平均を上回る運用成績を目指して運用されるファンドです。

このうち初心者が積み立てるなら、インデックス型だけで十分でしょう。

以上の①~④までの条件を満たしているインデックスファンドが何本あるのかというと、ざっと見た感じでは20本程度です。193本あるつみたてNISA用のファンドのうち、インデックス型は167本ですが、それを8分の1程度まで減らせるのです。これで一段と選びやすくなるはずです。

資金流出入、純資産総額の水準にも要注意

ここからさらに投資対象候補を絞るためには、純資産総額や資金の流出入を調べます。つみたてNISAは一度解約すると、その枠は二度と使えません。それは積み立てている投資信託が繰上償還措置を取った時も当てはまります。

繰上償還とは、何らかの理由でファンドの運用継続が困難になった時、投資信託会社の判断で、償還期日がまだ先なのに強制的に償還されてしまうことです。繰上償還されたらそのファンドでの積立は出来なくなります。したがって、繰上償還されるリスクが出来るだけ小さいファンドを選ぶ必要があります。

そのためには、現在の純資産総額がある程度のサイズで、かつ継続的に資金が流入しているものを選ぶのが無難です。ちなみに「ある程度のサイズ」がいくらなのかですが、最低でも50億円程度、出来れば100億円程度は欲しいところです。

この条件を当てはめると、候補ファンドをさらに絞り込めます。ちなみに前出の①~④までの条件を満たしているインデックスファンドのうち、純資産総額が100億円以上で、かつ1年間継続して資金純増となっているファンドは、

「SBI全世界株式インデックスファンド」(SBIアセットマネジメント)
「野村つみたて外国株投信」(野村アセットマネジメント)
「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」(三井住友DSアセットマネジメント)
「eMAXIS slim全世界株式(オールカントリー)」(三菱UFJ国際投信)
「eMAXIS 全世界株式インデックス」(三菱UFJ国際投信)
「つみたて先進国株式」(三菱UFJ国際投信)

以上の6本になります。

投資経験者で他にもさまざまな資産クラスに分散投資している場合は、必ずしもこの方法に沿う必要はありません。自分のポートフォリオを改善させるために、たとえば日本株のアクティブファンドで積立投資するのもひとつの手です。

でも、投資経験が全くなく、つみたてNISAの申し込みを機会に投資を始めるなら、まずはベースとなるリスク資産を持つべきです。それは奇をてらったものである必要はなく、「世界中の株式に分散投資する」というオーソドックスなタイプを1本持てば十分です。

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