「思い出や感謝の言葉」発達障害ある卒業生 発言させず 保護者憤り、学校側謝罪

 長崎市立中で今月16日、卒業式の後に体育館で開いた学級活動で、卒業生25人のうち特別支援学級の男子生徒1人だけ、中学校生活の思い出などを発言する機会が与えられなかったことが27日までに分かった。保護者はその場から退席。学校側は謝罪した。男子生徒には発達障害があり、校長は長崎新聞の取材に「人前で話すことが苦手だったことを考慮しての対応だったが、間違った判断だった」と釈明した。

 当日、男子生徒を見守っていた母親は、卒業生一人一人の言葉を聞きながら、わが子の順番を待っていたと明かした。「最初は忘れられているのかと思った。(退席した際)悲しいというかむなしいというか、いろんな感情が込み上げてきた。息子は人前で話すことなどはできる。特別な配慮ではなく、同じ卒業生として当たり前のことをしてほしかった」と憤る。
 学校によると、同校は3年1組が通常学級、2組が特別支援学級で、2組には男子生徒1人が在籍。卒業式後の学級活動は例年、各教室で開いているが、今年は新型コロナウイルス感染防止のため、体育館で2クラス合同で開いた。教職員や保護者も同席していた。
 この中で、1組の卒業生はくじ引きで呼び出され、担任から卒業証書を受け取り、3年間の思い出のほか、教員や両親への感謝の言葉などをそれぞれ述べた。学校側は男子生徒が話す機会を想定せず、くじの人数に入れていなかった。この後、男子生徒だけ教室で卒業証書を受け取った。
 男子生徒は帰宅後、母親に「何を言おうか考えていた」と漏らしたという。
 この場に居合わせた1人は「生徒を排除しているように見え、違和感を覚えた。こういうことが身近に起こりショックだった。教育現場の状況として見過ごせない。『みんなちがって、みんないい』ということを教育現場で教えて、一人一人を大切にする社会を築いていくべき」と改善を求めた。
 校長は「取り返しの付かないことで、申し訳ない。学校として、本人の頑張りを引き出して、成長した姿を見せてあげなければいけなかった」と語った。
 市教委学校教育課は「事前に保護者、生徒と十分共通理解を図り、細かな部分まで打ち合わせをして臨むべきだった。今回の反省を踏まえ、校長会などでも指導していく」としている。


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