スーパークレイジー君 当選異議申し立て人は音楽界の〝同業者〟だった!

今澤氏は大衆演劇「清水の次郎長」を率いて、施設慰問を行うなど地元の名士でも知られる(顔写真はスーパークレイジー君)

埼玉・戸田市議に当選した歌手のスーパークレイジー君(34)の居住実態を巡る市の選挙管理委員会による調査は、いまだ結論が出ていない。発端となった当選無効を求める異議申し立てをしたのは、作詞・作曲家の今澤雅一氏(70)だ。申し立てした当初から劇的な心境の変化があり、今では「スーパー君はマジメで正直者。4年間頑張ってほしい」とエールを送るほどになっていた。

クレイジー君は1月31日投開票の市議選で定数26に対し、25番目となる912票で当選した。少年院入所や暴走族の過去、特攻服姿での異色選挙戦で物議を醸したが、2月15日には、選挙区内での3か月以上の居住実態がないとして、当選無効を求める異議申立書が出された。

クロ判定となれば、議員バッジ剥奪となる申し立てを行ったのが、市内在住の今澤氏だ。自衛官、公立中学校教員を経て、演歌歌手・鏡五郎のヒット曲「清水の次郎長」「戸田の渡し」などの作詞・作曲も手掛けるなど、ジャンルは全く違うが、音楽界の同業者だった。

今澤氏に異議申し立てした理由を聞いた。

「スーパー君が当選してから、近所やカラオケ仲間の間で、居住実態がない、と騒ぎになった。誰も度胸がなく、異議申し立てできないから自分が義憤に駆られてやった。税金を払っている以上は適切な使い方をしてもらいたいし、変なウワサが出ると、市民としても困る。スーパー君には、キレイな体で4年間議会で務め上げてもらいたいから、シロクロはっきりつけた方がいいと思った」

今澤氏は銃剣道を指導する武道家でもあり、曲がったものは許せないタチ。また、過去2度にわたって、参院選の立候補経験があり、公選法にも明るかったため、当選無効の異議申立書を提出するのもハードルは高くなかった。

ところが、事態は思いのほか、大きくなった。異議申立書が出されたことに怒りを爆発させたクレイジー君は、選管の事務局長から遠回しに議員辞職するよう圧力を受けていたことを暴露。某宗教の関与もチラつかせ、巨大な陰謀が働いていると爆弾投下したのだ。

今澤氏は「異議申し立てしたことが、騒ぎになっているのはそういう理由かと新聞を見て知った。スーパー君とは面識もないし、私が誰かにそそのかされたということもない。ましてや宗教は大嫌いだからね」と当惑したという。

選管の事務局長が「相手は巨大組織」と発言し、クレイジー君に辞職圧力をかけたことにも「公務員として、あり得ない話。異議申し立てをした時にそのことを知っていたら、選管の人間を説諭していたよ」と今澤氏は憤る。

異議申し立てしてから1か月半が過ぎ、今澤氏のクレイジー君に対する見方も大きく変わった。

「当選後にスーパー君のSNSを見たら、いきなり暴走族や入れ墨の写真が出てきて、なんだと思ったが、先日の議会質問で自分の生い立ちから子供の問題を取り上げていて、本気だなと感じた。マジメで正直者で、かわいい存在だなと」
クレイジー君は、選管の結論が先送りされている現状になんとしてでも自身をクロ判定に持ち込もうとしている雰囲気を感じ、SNSではケンカ腰にもなっている。

今澤氏は「異議申し立ての取り下げは、もうありえないが、選管には公平な判断を望みたい。スーパー君にはできればシロになって、ウワサを払拭し、4年間、戸田市議として活躍してもらいたい。もしクロになったらきちんと説明してもらいたい。グレーなクロ判定ならその時、対応は考える」と申し立てしたことに悔いはないが、選管が恣意的な決着を出すことは、許されないと強調した。

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