お手本は“燕の主砲” 阪神・佐藤輝に「三振王」のススメ

1日の試合も2三振した佐藤輝

阪神のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明内野手(22)が1日の広島戦(マツダ)で本領を発揮した。5点リードの6回二死、広島・中村祐の128キロチェンジアップを一閃すると、打球は弾丸ライナーで右翼席中段へ突き刺さった。4試合ぶりの2号ソロは、実に8打席ぶりの安打。とくに前日、前々日の2試合で6三振と打線のブレーキ役だっただけに「打てない悔しさを持っていましたし、思い切って振った結果。1本出てよかった」と笑顔を見せた。

ここまで全試合に先発、打率1割台ながら4安打のうち2本が本塁打。規格外のアーチは一番の武器でもあるのだが、気になるのは三振の多さ。首脳陣ももちろん、それは認識済みで、試合前練習には井上ヘッドコーチが佐藤輝を呼び、助言を送った一方「それは大事にしてあげたい。相手にも怖さがある。三振が多いというのは、それだけ振って行っていくだけの思い切りを持っているということ」と今後も“振り切る”ことへのこだわるスタイルは、背中を押していく意向だという。

球団OBで阪神、日本ハムで打撃コーチを務めた柏原純一氏も、そんなアプローチに同意するひとり。「たとえ三振が増えたとしても、今は将来、セールスポイントになる項目も合わせて目標設定にして、取り組ませればいい」と提案する。

その指標になるのが、143試合で183個の三振を喫し、リーグ新記録を樹立した2019年のヤクルト・村上だ。「最多三振王」の“逆タイトル”は、打者としては不名誉記録ではある一方、そのシーズンで36本塁打を放ち、和製大砲としての礎を築いた。翌20年には不動の4番にまで成長。それだけに村上同様、佐藤輝も「あれだけの振り切れる打者はそうはいない。あとはいかに確率を上げるかだけ。三振なんて、最初のうちは気にする必要もない」と言い切る。

佐藤輝は1日現在でリーグトップの13三振。このペースは、1993年に当時の近鉄・ブライアントが記録した「204」のシーズンの最多三振記録(当時は130試合制)を上回る勢い。仮に今年「三振王」になったとしても、それ以上に手にする“副産物”は時が経つほど得られるはず――。そんな理解がある限り、虎の怪物は心置きなく、アーチストの道をまい進することができそうだ。

© 株式会社東京スポーツ新聞社