能楽師・清水寛二 核問題など現代を表現「長崎の聖母」 8月に東京公演 

「長崎で街歩きすると新しい演出のアイデアが浮かんでくる」と語る清水=長崎新聞社

 能楽師で観世流銕仙(てっせん)会理事の清水寛二(68)が8月、東京で長崎原爆を題材にした現代能「長崎の聖母」の公演を行う。清水が先月、長崎新聞社を訪れ「能が古典だけではなく、核問題などを抱える現代社会を表現する芸術であることを広く伝えたい」と意気込みを語った。
 同作は2005年、免疫学者で能作者の故多田富雄が制作。浦上天主堂を訪れた巡礼者の前に「聖母マリアの慈悲を伝えるために来た」と言う女が現れ、原爆が落とされた時の様子を語る-という内容。原爆による長崎の悲劇と世界平和への願い、魂の救済が描かれている。
 清水が同年に長崎で初演。海外では15年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせ米ニューヨークで披露され、19年には欧州公演もあった。
 「核に依存した社会をもう一度見直さなければならない」と、核問題に関心を寄せる清水。東京公演に合わせ、浦上天主堂の被爆マリア像をイメージした能面を新しく作ったと言い「長崎原爆について観客に理解を深めてもらう一つの要素になるのでは」と期待を込めた。
 東京公演は8月4~8日、東京都杉並区の劇場「座・高円寺1」で。同作のほか、対立する二つの民族が砂漠で一つの井戸の水を分け合うという、新約聖書の一節を題材にした能「ヤコブの井戸」も上演する。8月7日は昼と夜の計2回、ネットで有料のライブ配信を実施。
 チケットなどの問い合わせは銕仙会(電03.3401.2285)。

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