諫干堤防閉め切り24年 事業巡る訴訟 今も継続

閉め切りから24年を迎えた潮受け堤防の北部排水門=諫早市高来町

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防が閉め切られ、14日で24年になる。閉め切りと漁業被害との因果関係を訴え、漁業者らが潮受け堤防排水門の開門を求めた裁判など同事業を巡る訴訟は今も続き、根本的解決の見通しは立っていない。
 農地確保と低地の高潮対策などを目的とした同事業では1997年4月、湾奥部が全長約7キロの潮受け堤防で閉め切られ、国内最大級の干潟が消滅した。有明海沿岸での養殖ノリの色落ちを受け、漁業者の大規模な抗議行動に発展。工事中断、短期開門調査などを経て、2008年に完工した。
 一連の訴訟では司法判断も揺れた。10年の福岡高裁判決(当時の民主党政権が上告せず確定)は国に開門を命じたが、近年は、漁業者が国に即時開門を求めた第1陣訴訟が19年6月の最高裁決定で原告敗訴が確定するなど、司法判断は「非開門」の流れを強めている。同事業関連では、10年の開門確定判決を巡る請求異議訴訟差し戻し審など今も5件が係争中だ。
 開門、非開門を訴える双方の市民団体からは国に対し、「漁業と農業が両立する開門があるはず。有明海再生の道を探るための話し合いのテーブルを国は設定するべきだ」(開門を求める「有明海漁民・市民ネットワーク」の菅波完事務局長)、「開門すれば防災、営農への影響が大きい。国は(訴訟が続く)今の事態を打開するためリーダーシップを取ってほしい」(開門に反対する「諫早湾干拓事業および地域住民を守る会」の芦塚末光会長)とそれぞれ要望が上がる。
 農水省農地資源課は取材に「有明海再生に全力を尽くす」とし、開門せずに再生に向けた基金で解決を図る従来の方針を重ねて示した。


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