長崎開港450年

 お昼前、春の陽気に誘われ長崎港に接する長崎水辺の森公園に立ち寄った。港一帯は新幹線駅舎やMICE施設など建設ラッシュだが公園は静けさに包まれていた▲木漏れ日のさす芝生に座る。海風が心地よい。犬を散歩させたりベンチで語り合ったりする姿が見える。離島と結ぶ高速船が汽笛を響かせ入港した▲大昔、長崎という地名さえなかったころ、付近は寂れた寒村だったという。そして実は天然の良港だと気づいたのはポルトガル人らしい▲長崎発展の起点は450年前。キリシタン大名の大村純忠とイエズス会が1570年に結んだ長崎開港協定と、翌年のポルトガル船の初入港だ。岬の一角に6町が造られ、国際貿易都市の原形ができあがった。その後の出島の隆盛、三菱進出など港は貿易、造船、観光の主な舞台であり続けた▲開港450周年記念事業の基本計画を読むと本年を次の50年へのスタートと位置づけ各種事業を予定しているが、新型コロナ「第4波」の到来で、一部で中止や縮小を余儀なくされている▲原爆投下の苦難を挟みながらも、豊かで複雑で独特な長崎の歴史と文化を醸成してきた長崎港。深い入江は静穏で、周囲の山々の緑は目に優しい。コロナ禍の不安は尽きないが今はこの景色に癒やされながら、我慢の時なのだろう。(貴)


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