愛知・西尾市がスギ薬局創業者夫妻のワクチン予約枠を優先確保 〝上級市民〟優遇に不満の声殺到

世界では着実にワクチン接種が進んでいるが…(ロイター)

新型コロナウイルスワクチンの高齢者への接種予約をめぐり、全国で電話がつながりにくいなどの問題が起きるなかで〝上級市民〟への特別待遇が噴出した。

愛知・西尾市の近藤芳英副市長が同市在住の「スギ薬局」創業者の「スギホールディングス」杉浦広一会長(70)と昭子相談役(67)夫妻の予約を優先的に確保するよう担当部署に指示していたことが11日に発覚。近藤副市長は「日頃の恩に報いればという私自身の感情が誤った選択をしてしまい、反省している」と認め、同市としても謝罪する事態となった。

市などによると、4月12日、スギHD社員から「会長夫妻は薬剤師で医療従事者にあたるので、優先的にワクチンを打てないか」と市に相談があった。市担当者は断ったが、その後も3~4回連絡があり、担当者が近藤副市長に相談すると、同副市長は「何とかならないか」と夫妻を優先するよう指示した。夫妻は5月10日の接種予約がとれた。

「この問題は地元紙が11日朝刊でスクープしたが、同紙が10日に市に問題を指摘すると、市は慌てて杉浦夫妻の予約を取り消した。全国で予約が取りにくいと問題になっているように、西尾市の接種予約も6日に受付が開始されたが、すぐに枠が埋まるほど。会長夫妻だけ、明らかな〝上級市民〟への優遇措置。不満の声が市には殺到しています」(地元関係者)

スギHDは「社員が何度か問い合わせをしたのは事実だが、便宜を図ってほしいとお願いした認識はない」としている。

市側は、スギHD社員から「会長が接種を楽しみにしている」などと言われたことを明かし、中村健市長は「通常の働きかけというより、より強い圧力、プレッシャーと認識して、現場(担当者)は対応したようだ」と釈明。一方で「接種枠の取り扱いで公平性を欠き、市民からの信用を著しく損ねた。弁解の余地はない」と平謝りした。

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