長崎大情報データ科学部 大村移転断念 学長「維持費が想像以上」

移転断念の理由を説明する河野学長=長崎大

 長崎大の河野茂学長は13日、昨年4月に長崎市の文教キャンパスに新設した情報データ科学部を大村市へ移転する計画について断念すると発表した。同大で記者会見し、移転後の維持費が想像以上に大きいことなど理由を挙げ、既存校舎を改修して活用する方針を明らかにした。
 同大は昨年6月に大村市と覚書を交わし、移転に向けて協議を進めてきた。同市の園田裕史市長も同日、市役所で会見し「断念理由を上回るような提案が示せず、私の力不足だった」と無念さをにじませた。
 新校舎の候補地は、九州新幹線長崎ルート新大村駅東側で、2025年9月の移転を目指していた。土地や施設は市が整備して無償貸与するとし、整備費は約57億円を見込んでいた。
 同大の試算によると、維持費は年間約8800万円に上った。このうち3771万円の負担を大村市に要望。同市は応じる方針だったが、それでも大学の負担が大きすぎると判断。学生は2年後期から大村市のキャンパスで学ぶ計画だったが、経済的、精神的にも負担が大きく、他学部との連携にも支障があるとした。
 河野学長は大村市の誘致に向けた熱意と多大な労に対して「感謝している。(移転が実現せず)残念であり、申し訳なかった」と述べた。両者は包括連携協定を結んでいることから、引き続き地域の発展に貢献していく考えを示した。
 大村市ではサッカーJ2、V・ファーレン長崎の新練習拠点についても約1年間の検討の末、昨年7月に市内での整備を断念している。園田市長は「相手方がいる中での協議の重要性や難しさを感じた。同時に学んだことも多く、今後の町づくりに生かしたい」と述べた。

誘致が実現せず、会見で無念さをにじませる園田市長=大村市役所

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