コロナ感染でも選手に自己責任を強いるIOCに批判の声”ワクチン費用全額負担できたはず”

トーマス・バッハ会長(ロイター)

〝犠牲〟はここにも。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が「五輪の夢を実現するために、誰もがいくらかの犠牲を払わなければならない」と発言し猛批判を浴びるなか、選手に対しても自己犠牲を強いるIOCの姿勢に、非難の声が上がっている。

香港「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は22日、「選手の肩にコロナのリスクを負わせるIOCに怒りの声」という記事を掲載した。大会中の新型コロナウイルス感染対策やルールがまとめられた「プレーブック」で「あらゆる配慮にもかかわらず、リスクや影響が完全に排除されるとは限らないので、五輪・パラリンピック競技大会へ自己責任で参加することに同意するものとします」という一文に注目。疫学者でオーストラリアのバーネット研究所テクニカルアドバイザーのマイク・トーレ氏は「選手は意味を理解してない。特に政府が彼らの世話をする資源もない貧しい国々の選手に責任を負わせるのはとても深刻だと思う。病院機能が対応できない国に(感染した)彼らが戻ったら? それが心配です」と懸念を表明。アスリートの人権団体「ワールド・プレーヤーズ・ユナイテッド」のブレンダン・シュワブ事務局長も「IOCは、選手にコロナのリスクをしっかり示すべきだ。強制的な法的免除を通じて、選手の肩にリスクを負わせるのは解決策ではないし、良心的でない」と批判した。

ワクチン接種についてもトーレ氏は「遅い。すべての選手がするのは難しいし、マダガスカルやブルキナファソでは始まってもいない。IOCは貧乏じゃないのだから、すべて費用を払うこともできたのに」とチクリ。確かに、世界中で猛威をふるい、どこで感染するかもわからない状況で大会を開催し、感染したら「自己責任です」は、厳しい限り。どこまでも他人に犠牲を強いる貴族軍団らしい姿勢と言えそうだ。

© 株式会社東京スポーツ新聞社