もう一人子どもが欲しいけれど、教育費や生活費が心配です
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、第2子の出産に悩む30代の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
相談者
ウッディさん(仮名)
女性/専業主婦/33歳
兵庫県/賃貸住宅
家族構成
夫(会社員/39歳)子ども(2歳)
相談内容
子どもがもう一人欲しいが、今後の生活と教育費(特に大学費用)が用意できるか心配です。もし、子どもができれば、下の子が幼稚園に行くまで働けず、生活も不安。 将来は夫の実家に帰る予定にしてはいますが、家賃の負担が大きいため、その前に1500万円前後の中古マンションを購入しようかとも考えています。
家計収支データ
家計収支データ補足
(1)妻の働き方について
「2人目の子どもができた場合も考えれば、理想は正社員だが、販売経験しかなく幼稚園のことを考えるとパートから始めて、小学生のどこかのタイミングで本格的に仕事探すべきでは」と考えている。今パートで気になっている求人があり応募予定。そこは社員登用もありとのこと。もし働けることになったら無認可に預けて保育園の待機を待つ予定。
(2)保険料「2万3500円」について
・子ども/学資保険(18歳満期、満期金300万円)=保険料1万2000円
・夫/変額終身保険(65歳払込完了、死亡保障200万円)=毎月の保険料4533円
・夫/定期保険(保険期間25年)=保険料2763円(※おそらく死亡保障1000万円程度だと思われます)
・夫/収入保障保険(65歳まで、年金月額12万円)=保険料4222円
(3)住宅について
夫の実家に入る時期やどう住むかについてはまったく未定。夫の両親が亡くなってからということもありえる。そうなると、年齢的にも、できる限り早めに中古マンションを買うべきかとも思っているが、貯蓄もなく欲しい物件も今の家賃と同じ、もしくは低いくらいの予算内ではなかなかみつからず、賃貸に住み続けているというのが現状。
FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 保険の見直しで少しでも貯蓄率アップ
アドバイス2 教育費は「児童手当+月1万円」
アドバイス3 住宅購入はランニングコストを考慮
アドバイス1 保険の見直しで少しでも貯蓄率アップ
まずは、家計を見てみましょう。家計収支は毎月3万5000円のプラスですが、学資保険も貯蓄と考えていいので、実際の貯蓄ペースは4万7000円となります。これは家計支出を見る限り、よく頑張っていると言っていいでしょう。逆に言えば、現状ではこれ以上貯蓄ペースを上げていくのは難しいということです。手を付けるとすれば、趣味娯楽費と家族のこづかいですが、削ることであまりに生活が窮屈になってしまっては、節約も続きません。
そうなると、効果的なのは保険の見直しということになります。ご主人の変額終身はこの状況では不要でしょう。浮いた保険料は貯蓄に回してください。死亡保障については、定期保険の保障額が明記されていませんでしたが、保険料とご主人の年齢から推測して1000万円前後はあるはず。
それと、収入保障保険が現時点で3600万円ほどの保障になる他、学資保険の満期金も死亡保障と考えられますから、お子さん1人であれば十分な保障が確保できています。もし、2人となった場合、2人目のお子さんが小さい時だけ、プラス1000万円程度加えればいいと思います。
アドバイス2 教育費は「児童手当+月1万円」
ご心配の教育費ですが、毎月の貯蓄のうち、児童手当はすべて教育費に回すとすれば、それだけで約200万円貯まります。加えて、学資保険が18歳満期で300万円ですから、高校まで公立であれば、私大の4年分の学費は理系(平均520万円ほど)でもほぼ準備できることになります。
2人目のお子さんの教育費についても、同様に児童手当をしっかり教育資金づくりに回すこと。加えて、月1万円を学資保険や積立定期などで準備していけば、別途200万円が用意できます。したがって、生まれてすぐ始めることで、あまり負担増にならず、教育資金は作れると考えていいでしょう。
とは言え、今後お子さんが幼稚園、保育園に通う時期は、貯蓄は難しい可能性があります。したがって、奥様はできるだけ早く働くことがとても重要。パートでいい募集があるのであれば、即応募してください。2人目のお子さんができた時点で、またしばらく働けませんが、それは仕方のないことです。そして子育てが落ち着けば、ぜひ正社員を目指してください。収入がアップするだけでなく、厚生年金加入によって、老後資金がプラスされます。
アドバイス3 住宅購入はランニングコストを考慮
住宅については、慌てて購入する必要はないと思います。また、希望されている1500万円の物件は返済に無理があると言えるでしょう。
住宅を保有すれば、コストは住宅ローンだけではありません。固定資産税や、マンションであれば管理費、修繕費などといったランニングコストが発生します。固定資産税が月割で1万円、管理費・修繕費が1万5000円とすれば、合わせて月2万5000円。これを考慮せず、住宅ローンを家賃並みの返済額で組めば、ボディブローのようにこの固定費が効いてきます。
しかも、現時点で世帯収入にはボーナスがありません。毎月はきびしくても、ボーナスで貯蓄できる、あるいは生活費を補てんするということができない点もリスクになってきます。
したがって、少なくとも住宅コストを家賃並みにするのであれば、ローンの支払額は月5万円台前半が上限。20年返済(60歳で完済)、金利1.5%とすると、可能借入額は1150万円程度になります。また、現在の貯蓄180万円には手を付けたくありませんから、諸経費分も借り入れるとすれば、今現在で購入できる物件価格は1000万円以内ということになると考えてください。
仮に、今後5年で住宅資金を300万円作ったとしても、その分返済期間が15年と短くなりますから、ローンの支払い額を月5万円台前半に抑えるには、借入額は900万円が上限。結果的に、300万円のうち200万円を頭金としても、1100万円程度の物件ということになります。
であれば、もっと家賃の安い賃貸物件も合わせて検討してもいいと思います。県営住宅も候補のひとつ。購入するのであれば、十分試算をした上で決めるようにしてください。もちろん、奥様が働くことで世帯収入がアップすれば、購入可能額も上がります。それでも、無理をして住宅ローンを組むことはだけは避けるべきでしょう。
「ウッディ」さんから寄せられた感想
最近、毎月1万を幼稚園の入学費の為に貯金し始めたところです。この1万を貯金し続ければ、大学費を最低限用意できるとわかったので少し安心しました。気になっていた求人は、何個か応募したものの残念ながら採用は貰えませんでしたが、来年からまた気持ちを新たに仕事探しをして少しでも貯蓄を増やしたいと思います。
また家購入に関しては、シミュレーションして頂いたことで現実的に難しく、現在の住まいを含め再度見直していきたいと思います。2人目はやはり欲しいので、子供2人という前提でしっかり仕事探し、貯蓄を頑張っていきたいと思います。先行きが分からず不安ばかりでしたが、具体的に見直せたことで一歩が踏み出せそうです。ありがとうございました。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文/清水京武