先月末に始まったJ1リーグも、既に4節を消化した。
未だに試行錯誤が続くクラブもあるにはあるが、多くのクラブは新シーズンの戦い方が徐々に見えてきた。それはスターティングメンバーだけではなく、リード時もしくはビハインド時それぞれの交代枠の使い方も含まれる。
試合の流れを変えたいときに切る切り札も同様であり、監督はベンチに勝負の一手を用意しているものだ。その中でも今回は、攻撃が停滞したときに投入する駒として最適なドリブラーを紹介する。
田中 達也(ガンバ大阪)
昨シーズンはJ2のロアッソ熊本で9ゴール12アシストとブレイクを果たし、複数のJ1クラブが争奪戦を繰り広げた結果、出場機会を保障したガンバ大阪へ加入した。
攻守にハードワークでき、抜群のスピードを武器にサイドを攻略できるスプリンターで、そのプレースタイルは宮本恒靖監督が求めるそれと合致する。
開幕戦では、ビハインドで迎えた後半に2列目で起用され、シザースからの縦突破という形でクロスを何本も打ち込んだ。宮本監督はキャンプからあくまでサイドバックとして計算しているようだが、まだ守備面では監督の求める基準に達していない。
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まずは攻撃のジョーカーとしてアピールし、いずれは絶対的主力が唯一不在の右サイドバックでの定位置奪取を狙う。
岩崎 悠人(北海道コンサドーレ札幌)
ルーキーイヤーでJ2ながらいきなり8アシストを記録し、昨シーズンはサイドでチャンスメーカーのタスクを担ったため数字には表れなかったが確かな存在感を示した。
ヨーロッパの強豪クラブからも関心が噂されながら加入した北海道コンサドーレ札幌では、自身の能力が最も発揮されそうなシャドーでの起用が期待される。
ベストイレブンのチャナティップに加え、同じ新加入の鈴木武蔵やアンデルソン・ロペスがいきなり派手な活躍をしたこともありリーグ戦ではまだ出番が無いが、その圧倒的なスピードを活かした切り込みが必要とされる機会はすぐに訪れるだろう。
セレッソ大阪に移籍した都倉賢のように、最終盤に試合を決定付ける活躍が期待される。
マルティノス(浦和レッズ)
横浜F・マリノスから移籍した昨シーズン序盤は主軸を担ったが、獲得を強く望んだ堀孝史前監督が数試合で解任されてからは長く構想から外れた。
生粋のウインガーであるマルティノスにとって3-5-2フォーメーションの中では適性ポジションが見い出せず、苦悩が続いた。
4バックへの回帰も予想されながらオズワルド・オリヴェイラ監督は昨シーズン同様のシステムを継続しているが、今季はインサイドハーフのポジションでリーグ戦全試合に途中投入され、徐々に序列を高めている。
横浜時代にエリク・モンバエルツ監督の下でそうだったように、JとACLのダブル制覇を狙う浦和で戦術兵器と化すか。
小川 慶治朗(ヴィッセル神戸)
下部組織出身でクラブのエースナンバーを背負うチームの顔は、湘南ベルマーレへの半年間の期限付き移籍を経て一回り成長して帰ってきた。
トップチームデビュー直後から鮮烈な活躍を披露しプラチナ世代の一員として将来を期待されたのは過去のこと、度重なる怪我とクラブの積極補強により近年はどんどんチーム内での序列を下げていった。
しかし、今シーズンはカップ戦での活躍からリーグ戦でも出場機会を掴むなど、スペースを突けるドリブラーの復帰を望んだ監督の期待に応えている。
途中投入されるとホームスタジアムは大きな歓声が沸き、空気を一変することができる。雰囲気をも変えられる正真正銘のジョーカーは、ここ何年もドリブル回数がリーグワーストのチームにおいて異色を放つ。
齋藤 学(川崎フロンターレ)
かつてはリーグ最強のドリブラーとして全ての対戦相手から恐れられたが、2017年に負った右膝前十字靭帯損傷による長期離脱からの復調に苦しみ、スタイルの異なるチームへの移籍もあって、昨シーズンは不完全燃焼に終わった。
しかし、先日のACLグループステージ第2戦のシドニーFCとの試合では、途中出場から2分で決勝ゴールをマークし、完全復活の狼煙を上げた。
今シーズンはここまで全公式戦で先発起用が0。この事実こそが王者の選手層の厚さを物語っているが、リーグ戦は開幕から4戦未勝利と沈黙。
3連覇に向けて大きく遅れをとっている状況だが、今こそ異分子的存在である齋藤の個人能力を解放する時だろう。今後のキーパーソンといえる。