月6万円の保険料が家計を圧迫、解約せずに保険料を減らす方法は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、貯金ができないため夫の生命保険を解約したいという34歳の主婦。今解約すると元本割れのリスクがありますが、家計が苦しいため支払い続けるか悩んでいます。FPの鈴木さや子氏がお答えします。

妻が時短勤務になり、貯金がまったくできません。そのため、夫の終身保険を思い切って解約したいと考えていますが、アドバイスいただけないでしょうか。

現在、学資として貯蓄性のある生命保険を年間33万円、夫の生命保険(終身)を年間39万円支払っています。前者は、2015年から開始して、17年間で払込が完了、その時点で600万円近くの返戻金がある予定です。後者は、2012年に開始し、払込完了は夫が50歳時です。いま解約すると元本割れします。

ですが、保険料の支払いが苦しく、継続すれば家計にとってさらに損失になるのではと考えています。もちろん、死亡時や三代疾病になると1000万円が支払われますが、夫婦とも退職金がないため、これからは老後のための貯蓄をしたいと考えています。

住居は、転勤もあるのでこれからも賃貸で考えています。なお、夫の手取りの詳細はわからず、毎月家賃以外と携帯代以外の生活費を9万円もらっているだけです。

〈相談者プロフィール〉

・女性、34歳、既婚(夫:35歳、会社員)

・子ども2人:4歳、1歳

・職業:会社員

・居住形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:28万円

(夫:9万円※家計に入れている金額、妻:19万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:130万円(妻)

・毎月の世帯の支出目安:26万円

【支出内訳の目安】

・住居費:なし(社宅のため夫の給料から天引き)

・食費:5万円

・水道光熱費:2~3万円

・教育費:3万円(保育料と給食費、習い事)

・保険料:6万円

・通信費:1.4万円

・車両費:なし

・お小遣い:3万円

・日用品:1~2万円

・その他:3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:1.5万円

・ボーナスからの貯蓄額:10万円

・現在の貯蓄総額:190万円

・現在の投資総額:100万円

・現在の負債総額:なし


鈴木:小さなお子様を育てながら、仕事に家事に家計管理に頑張っていらっしゃいますね。保険料の負担が大きく、解約を考えているとのことですが、解約にはデメリットもあるため注意が必要です。どのように保険を見直せばよいかお伝えします。

保険の解約を考えたらチェックしたい「3つのこと」

家計を見直す基本は「固定費」を減らすことですので、保険を見直して保険料を減らすことは効果大! しかし安易に保険を解約するのはNGです。保険の解約を考えたら、次の3つについてチェックしましょう。

【1.何のために入ったかをあらためて考えよう】
保険に加入した時、どんなきっかけで、何のために入ったかを思い出してください。ご相談者様の場合、貯蓄性保険の目的はお子様の大学入学資金、そして終身保険は、夫が死亡または三大疾病になった際に不足するお金に備えつつ、生きていれば老後資金として活用したい、という目的で入ったのではないでしょうか。終身保険を解約すると、夫が死亡または三大疾病になった際への備えがなくなりますので、それで大丈夫かを考えましょう。

【2.保障が重複していないか、すべての加入保険をチェック】
同じような保障について、複数の保険に加入していないかを夫婦でチェックして。たとえば三大疾病特約がついている医療保険に加入していたり、夫が自分で会社の保険や共済に加入していて、保障が重複しているケースもよくあります。この機会に、家族全体がどのくらい保険で備えているかを洗い出すとよいでしょう。重複している保障があれば、その部分について一部保障を減らしたり、解約することができます。

【3.我が家に必要な保障がどのくらいか計算しよう】
保険のコストを抑えるコツは、「必要保障額」について「掛け捨て」で備えることです。ご相談者様の家庭の「夫が死亡した場合の必要保障額」はいくらでしょうか。ご相談者様は就労収入があるため、お子様の大学卒業後は就労収入と遺族厚生年金で生活できると仮定し、21年後までにかかるお金に備える必要保障額を試算します。

【必要保障額の算出方法】

必要保障額=これから必要になるお金-(これから入ってくるお金+今の貯金額)

<これから21年後まで必要になるお金>
■生活費:毎月30万円(21年後まで)
ご相談者様の場合、夫の死亡後は保険料負担(6万円)がなくなりますが、夫の社宅がなくなるため住居費は上がると考えられます。夫が負担している携帯代が不明ですが、たとえば住居費10万円、携帯代と通信費合わせて2万円とした場合、毎月の支出は約30万円です(家族が減るため生活費を減らして試算するのが一般的ですが、お子様にかかる生活費はこれから上昇するので今と同じレベルとしています)。
■教育費:お子様二人合わせて3000万円とします。
■その他にかかるお金:年50万円とします。
合計すると、30万円×12ヵ月×21年+3000万円+50万円×21年=1億1610万円

<これから21年後までに入ってくるお金>
■遺族基礎年金:14年後まで123万1500円/年、14年後から17年後まで100万6600円/年
■遺族厚生年金:30万8300円/年
(夫の今の年収を300万円と仮定、年金計算は令和2年価額によるもの)
夫が亡くなった後、ご相談者様は遺族厚生年金を一生(※)、遺族基礎年金を下のお子様が高校卒業(18歳到達後の3月末)まで受け取れます。
(※ご相談者様が老齢厚生年金を受け取る65歳以降は調整されます)
■死亡保険金:貯蓄性保険・死亡保険合わせて1600万円とします。
■妻の年収:19万円×12ヵ月+130万円=358万円

合計すると、123万1500円×14年+100万6600円×3年+30万8300円×21年+1600万円+358万円×21年≒1億1792万円

<今の貯金額>290万円

よって、ご相談者様の場合、夫の万が一に備えた必要保障額は以下のようになります。

1億1610万円-(1億1792万円+290万円)=▲472万円

保障はなくても大丈夫という結果となりました。

しかし、夫が亡くなった場合、今の年収を保って働き続けるのは難しいかもしれません。もし年収が358万円から200万円となった場合、必要保障額はプラスに転じ、約2800万円となります。お子様がいる共働きの場合、ライフプランがどうなるか読めないため、できれば夫婦とも死亡保障を1000万円程度ずつかけていると安心でしょう。

保険を解約せずに保険料を減らす方法とは?

保障は不要と言えども、前述のようにお子様がまだ小さく今後のライフプランが読めないため、今夫の死亡保険を解約するのはあまりおすすめできません。そこで、解約せずに支出を減らす方法をいくつかお伝えします。

【1.終身保険を払済保険にする】
払済保険にすると、解約返戻金を原資として入れることになるため保障は減りますが、今後の保険料の支払いがなくなります。

ご相談者様の場合、払込期間23年(2012年から2035年まで)のうち支払ったのは8年間なので、ざっくりですが、保障が1000万円が350万円くらいになると予想できます。加入している保険会社に問い合わせて見積もりをしてもらいましょう。

解約すると元本割れして損をしますが、払済保険にすれば今後の支払いをなくして保障を一部残せますので、おすすめです。ただし、主契約だけが残り、特約はすべて消滅しますので注意してください。

【2.不足する保障について定期保険か収入保障保険に入る】
払済保険に変更すると、前述した安心するための1000万円という保障には650万円不足します(350万円とした場合)。もし不安であれば、足りない保障は保険料を抑えられる、掛け捨ての定期保険か収入保障保険で準備しましょう。

たとえば死亡保険金が700万円、保険期間20年間の定期保険であれば、保険料は月1500円などで入れます。また、亡くなってから保険金を毎月受け取れる収入保障保険なら、定期保険より保険料を抑えられます。たとえば月額5万円、保険期間20年間(夫の死亡後2040年まで受け取ることになる)の収入保障保険なら、保険料は月1000円程度。こうすれば、現在年間39万円払っている保険料を、年間2万円以内にすることができますよ。

ちなみにご相談者様の保障を追加する場合、定期保険なら月1300円から、収入保障保険なら月900円程度からありますので、夫婦で加入しても年間3万円ちょっとで備えられそうです。

保険の見直しの前に、夫婦で話し合いを!

保険の見直しについてのみお伝えしましたが、夫の収入や貯金についてご相談者様が把握していないことが気になりました。

必要保障額を知るために計算する遺族厚生年金も、夫の年収によって大きく変わってきます。またご相談者様が知らない夫の貯金があれば、必要保障額はもっと下がるでしょう。夫婦それぞれが家計に入れている金額についても、もしかしたら不公平に感じることもあるかもしれませんね。

これからは教育費もかかりますし、老後資金の積立ても二人で協力してしていかねばなりません。この機会にご夫婦でマネープランを話し合えるといいですね。

© 株式会社マネーフォワード