メクル第463号 ブレイクダンサー TAISUKEさん=佐世保市出身= 「考える力」 世界で戦う武器に

「自分の力を信じて、本気で取り組んでほしい」と話すTAISUKEさん=佐世保市新港町

 スピード感あふれるアクロバティックな演技(えんぎ)で世界的に活躍(かつやく)しているTAISUKEさん(29)。7歳(さい)でブレイクダンスを始め、国内外の大会で50回以上も優勝(ゆうしょう)しています。これまでの歩みやダンスへの思いを聞きました。

 世界で戦うために最も大事なのは「考える力」だと思っています。「自分に何ができるのか」「何を伝えたいのか」。真正面から自分と向き合ってきました。
 もちろん練習は大事です。ぼろぼろになるまで自分の体をいじめながら、技(わざ)をマスターした時の達成感はとても大きいものです。
 自分にしかできない技や見せ方にこだわっています。両足を広げて肩(かた)や背中(せなか)で回る「ウインドミル」も人それぞれ回り方が違(ちが)います。自分の体の動きをいかに深掘(ふかぼ)りできるかが大事。ダンスは、インスピレーションを体に落とし込(こ)む芸術(げいじゅつ)のようなもの。その表現(ひょうげん)活動を支(ささ)える基礎力(きそりょく)は人に勝っていると思います。
 ダンスをやめたいと思ったことは何度もあります。小学生の頃(ころ)、同い年のいとことチームを組んで大会で活躍し、多くのメディアに取り上げられました。しかし、遊ぶ時間はなく、いとこと比べられるのも嫌(いや)でした。世界各国を訪(おとず)れ、一対一で技を競うダンスバトルは孤独感(こどくかん)を感じました。
 実は自分のダンスのイメージは「波」。気持ちには波があり、その気持ちと向き合うことが大切。床(ゆか)からの高低差、会場の前後左右と空間の使い方を意識(いしき)するほか、メンタル的な波も表現し、演技にめりはりをつけているのです。

ブレイクダンスの世界大会で演技を披露(ひろう)する=2016年12月、名古屋市(TAISUKEさん提供)

 新型コロナウイルスの影響(えいきょう)で、今年は世界大会は開かれないかもしれませんが、プロとしていつでも戦える準備(じゅんび)をしています。2024年パリ五輪ではブレイクダンスが追加種目となりました。選手として五輪を目指すのか、指導(しどう)する側に回るのかは決めていませんが、周(まわ)りを引き込み盛(も)り上げるつもりです。
 ダンスを極めるため高校2年の時に上京しましたが、古里を大切にしたいと思っています。佐世保(させぼ)市の「佐世保観光名誉(めいよ)大使」を務(つと)めていて、佐世保をはじめ県内のダンスシーンを盛り上げていきたいです。関東と長崎を行ったり来たりしながら、指導者の育成ができないかと真剣(しんけん)に考えています。
 また先日は、新型コロナ対策(たいさく)の最前線で戦う県内の医療従事者(いりょうじゅうじしゃ)に感謝(かんしゃ)の気持ちを込めて、清涼(せいりょう)飲料水720本を県医師会(いしかい)に贈(おく)りました。
 小学生の頃に「世界一になる」「ダンスで人を笑顔にする」と二つの目標を掲(かか)げました。それから「世界一になれる」と信じ、本気でダンスに取り組んだから夢(ゆめ)がかない、日本人ダンサーとして初めてスポンサーもつきました。企業(きぎょう)から「ブランドになる」と価値(かち)を認(みと)めてもらえたのです。
 若(わか)い人はそれぞれ目標を掲げ、自信を持って、本気で取り組んでほしい。「根拠(こんきょ)のない自信」ほど強いものはない。「できる」「やれる」と信じるだけで前進する力になるはずです。

 【プロフィル】本名・野中泰輔(のなかたいすけ)。1990年8月3日、佐世保市生まれ。市立日野小-日野中-県立佐世保中央高から東京芸能(げいのう)学園高等部に転校。2011年、ブレイクダンスの世界大会で日本人個人(こじん)として初めて優勝。自ら率いるダンスチーム「THE FLOORRIORZ(フローリアーズ)」は、別の世界大会で15年から3連覇(れんぱ)。現在(げんざい)、「Red Bull BC One ALL STARS(レッドブル ビーシー ワンオール スターズ)」など国内外のチームにも所(しょ)属(ぞく)。ダンスのイベント企画(きかく)なども手掛(てが)ける。

© 株式会社長崎新聞社