57歳からの老後貯金スタート。年金支給額は2万円「希望はありますか?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、57歳パートの女性。借金を返済し終え、ようやく自分の老後のために貯金を始めたいといいますが…。FPの高山一惠氏がお答えします。

前夫の残した借金を返済し、子供を育て上げた今から自分の老後の貯金のスタートです。今の勤め先は60歳定年です。年金も払えなかった時期があり、支給金額は現在2万円程度です。この先、どのように計画を立てればよいのでしょうか?

<相談者プロフィール>

・57歳、女性、独身(離婚)

・子ども:2人(上26歳、下24歳)

・職業:パート・アルバイト

・居住形態:賃貸(一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:24万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:なし

・毎月の世帯の支出目安:12万円

【支出の内訳(12万円)】

・住居費:5万円円

・食費:2万円

・水道光熱費:1万円

・保険料:0.4万円

・通信費:1万円

・お小遣い:1万円

・その他:(1.6万円)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:12万円

・ボーナスからの貯蓄額:70万円

・現在の貯蓄総額:90万円

・現在の投資総額:なし

・現在の負債総額:なし


高山: ご質問ありがとうございます。今までいろいろご苦労があったんですね。57歳から老後資金作りをスタートさせるとなると、正直大変ですが、できることを1歩ずつやっていきましょう。安心して老後の生活を送るためには、「長く働き続けること」、「年金を増やすこと」、「お金にも働いてもらうこと」が大切になります。

定年まであと3年でいくら貯められるか?

現在の支出を拝見させていただきましたが、とても堅実に生活していますね。正直、衣食住の基本生活を送るための最小限の生活費で暮らしていらっしゃると思います。これ以上、削減する項目はないですね。

老後に向けて貯金をスタートさせたいとのことですが、まず、定年退職を迎える60歳までに準備できるお金について考えてみましょう。

現在、1か月の生活費が12万円程度、収入は60歳まで24万円の予定となっていますので、単純に計算すると、毎月12万円貯蓄できる計算になります。お金を貯める際、コツコツ貯蓄していくことも大切ですが、大手都市銀行の現在の普通預金の金利は0.001%、定期預金の金利は0.01%と、超がつくほどの低金利。老後までに少しでもお金を増やそうと思うと、資産運用すなわち、お金にも働いてもらう必要があります。毎月の貯蓄12万円から3万円程度を「つみたてNISA」で運用するとよいでしょう。となると、毎月の貯蓄額は9万円となり、60歳までの3年間貯めるとして324万円になります。

70歳まで働くことを前提としたプランを!

ただし、基本的に年金の支給は65歳なので、60歳以降も仕事を続けないと、せっかく貯蓄ができたとしても取り崩して生活をしなければならなくなります。ですから、60歳以降も働き続けることを前提に生活設計を考える必要があります。

現在、日本人女性の平均寿命は、87.32歳、日本人女性の2人に1人が90歳まで生きると予想されています。とはいえ、女性の場合、健康寿命は75歳程度のようなので、ひとまず、70歳までは働くことを前提に老後のプランを考えましょう。

少なくとも毎月の家計を赤字にしないためには、毎月の生活費12万円に加えて、上記で提案した「つみたてNISA」を70歳まで運用すると仮定すると、その積立額も含めて、60歳以降の収入として手取りで15万円程度はほしいところです。

70歳まで働き続けて将来受け取る年金の金額を増やす

また、現在年金の受給金額の見込みが毎月2万円とのことですが、60歳以降も働き続けることで、将来の年金額も増やしていきたいところです。

これまでの相談者さんの年金加入の詳細がわからないので、一般的なアドバイスになってしまいますが、60歳以降も手取りで月額15万円程度の収入を得るとなると、パートやアルバイトだとしても厚生年金に加入する可能性が高くなります。パートやアルバイトであっても、1週間の就業時間が一般社員の4分の3以上なら厚生年金に加入します。これ以下でも、1週間の就業時間が20時間以上、雇用期間が1年以上見込める、月々の賃金が8万8000円以上、学生でない、常に社員が501人以上いる会社に務めている、という条件に当てはまる場合には、厚生年金に加入します。

厚生年金は、会社に勤務している限り70歳まで強制的に加入することになります。長い間厚生年金に加入することで、その分将来もらえる年金額は多くなりますし、保険料の半分は会社が負担してくれるので、厚生年金の加入期間を長くするのは良いことです。

繰り下げ受給との合わせ技で年金受け取り額を増やす

また、増額になった年金を繰り下げ受給することで年金の受け取り金額を増やすことができます。

通常年金は65歳から受け取りますが、年金を繰り下げ受給することで年額8.4%の増額になります。仮に70歳まで繰り下げ受給をすると42%の増額になります。

年金は死ぬまで終身で受け取れるので、長生きすればするほどお得になります。長生きの傾向にある女性こそぜひ、検討していただき制度です。

資産運用してお金にも働いてもらう

上記でもお伝えしたようにお金を効率よく増やすためには、お金にも働いてもらうことが必要です。

投資というと、なかなかハードルが高いのですが、初心者でもリスクを低くしながら安定的にお金を増やしていける制度として注目されているのが「つみたてNISA」です。「つみたてNISA」は年間40万円までが投資上限金額ですが、投資で得られた利益が最大20年間非課税になる制度です。

金融庁のデータによると、国内・先進国・新興国の株、債券に分散投資をした場合の年平均利回りは、4%程度とのこと。仮に「つみたてNISA」を活用して、バランス型の投資信託で運用したとしましょう。今から70歳まで13年間、毎月3万円を4%の利回りで運用することができれば、約612万円(積立元本は468万円)になります。

60歳までに貯めた324万円の貯蓄を70歳まで取り崩さなければ、70歳までには1000万円程度の貯蓄ができていることになります。今後、相談者さんの年金がどこまで増えるのかにもよりますが、ある程度の目処は立つのではないでしょうか。

「長く働く」「年金を増やす」「お金に働いてもらう」が希望に

60歳以降も手取りで15万円程度の収入を得続けるのは、なかなか難しいかもしれませんし、経済状況は目まぐるしく変わるので、今後はどうなるかわかりませんが、ひとまず、現時点でできることをお話しさせていただきました。長く働き続けること、年金を増やすこと、お金にも働いてもらうこと、この3つを確実に実行していくことが未来を開いていくことにつながると思います。よかったら参考にしていただけると幸いです。

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